●ミニ・コラムその14〜6部DIOはフレンドリーディオは悪党だけど、6部から読み始めた人は彼のフレンドリーさに好感を持つかもしれない!
6部に初登場した時(69巻)のDIOの一コマ目。僕は驚倒した。あの孤高なDIOが、チョ〜親しげにプッチの膝へ自分の足を乗せているではないかッ!2人の出会いはこの1年前に遡る。
1987年、プッチが15歳の時のこと。太陽光を避ける為に教会の地下納骨堂に隠れていたDIOは、神学生のプッチに見つかってしまう。「おい、ここは日曜日以外は一般の立ち入りは禁止になっているんだぞ」「太陽の光にアレルギーの体質なんだ。日没まで家に帰れないので休んでいた」「…なるほど。それに対し何か僕に出来る事は?」「別に」「気の毒だね。神父様には黙っててやるから日が沈んだら出てってくれ」「フ、面白いヤツだな。私はここの美術品を盗もうとしている泥棒かも。それとも"居ていい"と言っときながら、実は通報するつもりだとか?」「そうして欲しいのかい?…太陽アレルギーなんてウソは泥棒はつかないだろう。きっと本当だからここにいるんだと思う。通報なんかするものか」。
DIOは御礼にプッチの生まれつき曲がっていた右足の指を真っ直ぐにしてあげた。そして"出会い"を求めて旅をしていたDIOは、プッチに対して本能で「引力」を感じ、大切な"スタンドの矢"をプレゼントする。この翌年に妹ペルラの悲劇が起き、プッチは矢の力でスタンドが覚醒した。
記憶やスタンドをDISC化できるホワイトスネイクの能力を知ったDIOは、プッチに問いかける「君はなぜ私を裏切らない?君は私の弱点が太陽の光で、昼…暗闇で眠るのを知っている。私の寝首をとればいいだろう…。私の『ザ・ワールド』をDISCにして奪えば君は王になれる。やれよ」「そんなことは考えた事もない…僕は自分を成長させてくれる人間が好きだ。君は王の中の王だ。君がどこへ行き着くのか?僕はそれにつ いて行きたい。神を愛するように君のことを愛している」。DIOはプッチの手を掴んで自分の頭に差し込んだ--さあ、DISC化しろと言わんばかりに。ズブズブズブ。プッチは沈黙し、DIOは謝罪した。「すまない…君を侮辱してしまったか…。思ってもみなかったのだ。話をしてると心が落ち着く人間がいるなんて…君がいなくなるのが怖かったのだ…」。指を抜いたDIOは自分の骨の一部をプッチの手の中に入れた「それを受け取ってくれ…謝罪の印だ。今私の体から抜き取った。君にパワーを与えるだろう」。翌年DIOはエジプトで殺害されたが、彼が残した骨は22年後に"とてつもない事"を宇宙に起こす。
【DIOの骨をめぐる小考察】
●第74巻〜超くつろぎまくりのDIO「なぁ…知ってたか?プッチ」 「なぁ…知ってたか?プッチ。パリのルーブル美術館の平均入場者数は |
(シーン48)第79巻 ケープ・カナベラルの死闘 (注)画像は右→左読み
プッチの最終目的地、それはフロリダ州東部の大西洋に面したケープ・カナベラル(NASA・ケネディ宇宙センター)。先行するプッチを車で追跡する徐倫、エルメェス、アナスイ、エンポリオ(母をプッチに殺された少年)は、目を疑うような異常事態に遭遇する。前方から人や乗用車が"水平に落下"してくるのだ!エルメェスは前輪が浮き始めていることを感知。「みんな車の外に出ろォオーッ!!地面の外の何かに掴まるんだッ!わからないのかッ!車が後ろにひっくり返るぞッ!!」。
車体が落下する直前にアナスイが地面にダイバーダウンで潜行し、彼の体に徐倫が、徐倫にエンポリ� �が掴まった。しかし、エルメェスは石柱が直撃し、車ごと転落していった…!徐倫は叫ぶ「エルメェェェースッ!」。前方からは、さらに大型観光バスや樹木までが落下してくる。頭上をかすめていく車にエンポリオは肝を潰す「水平に落ちるなんて考えられないィィィーッ!地面があるから『重力』なんじゃあないのか!?」。3人は何とかガードレールにしがみ付き、前方の宇宙センターの入口"ビジター・センター"に向かって"登って"いく。
ビジター・センターのチケット売り場まで登って来た一行を待ち受けていたのは、プッチとDIO(緑色の赤ちゃん)の融合によって誕生した新スタンド『C-MOON』。能力は"触れたものを内部から裏返す"というもの。徐倫はC-MOONの攻撃を右手で受け止めた結果、指の骨と皮が裏返って� �まう。メギョ、メギョ、バギョアァ!「み…右手があああああッ!」。しかし徐倫は果敢に左ハイキックをC-MOONの顔面にヒットさせる。バグオオオアッ!C-MOONはよろめきつつも徐倫の足を両拳でパンチ。ドグシャアア!左足が裏返る。ブゥシュウ!
バランスを失った徐倫をC-MOONがさらに襲う。バグオ!エンポリオ「うわあああ!」。バキ、バキョ。だが徐倫は慌てない「パニくるな…エンポリオ。殴られて"裏返る"っていうんなら、もう一撃、あえて打たせてさらに裏返ればいい」。メギョ、メギャア。元に戻った!
一進一退の攻防が続く中、アナスイの身を呈しての加勢もあって、徐倫はC-MOONをストーン・フリーで磔状態にし、オラオラを叩き込める位置まで接近する。
※このあたりの攻防戦は単行本を読もう。密度 が濃すぎて活字で再現出来ない!
吠えるアナスイ「やれッ!とどめを刺せッ!!徐倫ーッ!」。C-MOONは遠隔操作型。プッチは安全な場所からこの攻防を見守っていたが、C-MOONが窮地に追い込まれ姿を現す。彼は既に徐倫の背後に立っていた。「イエス様は十字架にかかる運命を背負っていた。聖母マリア様も息子を失う運命にあった。人間の幸福において『克服』しなければならないのは『運命』だ…。私とDIOにとってのそれは『ジョースターの血統』だった!」。
「オラァア!!」徐倫が振り向きざまに攻撃すると、突然彼女の体が宙に浮かんだ。「なにィイイイイーッ!か…『体』がッ!『空の方向』に!?」。「私の体が『基本』だ。私のいるこの足元で『重力』は逆転する」。空中でもがく徐倫の� ��にC-MOONの拳が叩き込まれた「ウシャアアアア!」。ドグシャァ!プッチはクルリと背を向け立ち去っていく「決着はついた!徐倫にはもう痛みや思考したりする感覚はない。裏返ったのは心臓だ…脳の血液も逆流してるだろうからな」。ズバアッ!徐倫は血を噴出しながら落下していった。
※プッチはなぜケープ・カナベラルを目指したのか。
生前のDIOは16歳のプッチにこんな話をした。「『天国へ行く方法』があるかもしれない。おい、妙な顔をするな。私の言ってる"天国"とは"精神"に関する事だよ。精神の"力"(スタンド)も進化するはずだ。本当の幸福がそこにはある。幸福とは無敵の肉体や大金を持つ事や人の頂点に立つ事では得られないというのは分かっている。真の勝利者とは"天国"を見た者の事だ…どんな犠牲を払っても私はそこへ行く」。プッチが具体的な方法を尋ねると、「一冊のノートに記録してある」。しかし、この翌年にDIOは承太郎に殺され、承太郎は発見したノートを読後に焼却。プッチはノートを見た承太郎の記憶を欲し、徐倫を餌に彼を刑務所におびき出し記憶DISCを抜き取ったのだった。
DIOがエジプトに散って22年後、プ ッチはスポーツ・マックスに命じてDIOの骨に魂を呼び戻させる。DIOはかつてスタンドを様々な角度から研究し、"ザ・ワールド"が進化した先にある世界こそ、人類が進むべき道と結論付けていた。"精神力の表れ"であるスタンドの進化には膨大な精神エネルギーが必要とされる。罪人の魂に一般人よりも強いパワーがあるとDIOは考え(罪人は他人を押しのけてでも幸福になろうとする)、ゆえに『厳正懲罰隔離房』で"緑色の赤ちゃん"としてDIOが骨から再生した時に、植物のように極悪囚人達から養分(パワー)を吸っていたのだ。
DIOのスタンド研究ノートには、太陽と月が並び引力がMAXになる新月の日に「北緯28度24分、西経80度36分」の場所でスタンドが最終進化を遂げると予測し、この時点で『天国の時』が始ま ると刻んだ。プッチには『天国の時』が何か分からなかったが、DIOの指定した北緯・西経の交差地点にはケープ・カナベラルがあった。
ここにロケット打ち上げ場があるのは偶然ではない。自転の遠心力の影響で、この地点は沖合いの海面が50mも高く、新月には海抜が100mも上昇するという。つまり同地は「地球の引力が最も弱い」場所であり、ロケットの打ち上げに地上で一番適した場所なのだ。カナベラルに到着したプッチは叫ぶ「全ての『始まり』に…『重力』があった!この大地も…!!『重力』から始まり…!『引力』ゆえこの世界は星の周りを回るッ!この地でこれから何が起こるのか…!この私の肉体と精神の中に!!」。
プッチはDIO(緑色の赤ちゃん)と融合したことで重力を操るC-MOONを手に入れた。融合後� �プッチの左肩にDIOの影響で星型のアザが出現する(双子のウェザーにもプッチに呼応してアザが現れた)。今後、C-MOONが新月の影響でどうなってしまうのかはプッチ自身にも想像がつかない。とにかく、親友DIOの研究を信じ、彼の語る『天国』の到来を待つだけだ。そして、新月は36時間後に迫っていた。
※C-MOONの名前の由来…Crescent Moon。三日月や新月の意味でこれらは未知や成長の象徴。発展段階にあるスタンドということか。
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徐倫の心臓を破壊し"ジョースター"を越えたと確信するプッチ「私が新月を前に得たものは"無敵さ"なのか?だがあくまで私の求めるものは"強さ"ではなく全ての人間が到達すべき"幸福"だという事を心に戒めておこう。そして空条徐倫は単なる犠牲者。目的達成には必ず付きもののな…試練と犠牲なのだ」。
アナスイ「うおおおお!」エンポリオ「そんなバカなぁああ!」。果たして2人でプッチを倒せるのか?トゥルルルル。その時、エンポリオのケータイがメールを受信した。『娘と神父が出会ったことは感覚で知っている。娘は生きている。だが、まったく無事というわけでもないらしい。私が行くまで徐倫を保護してくれ。おそらく娘は"重力"を封じ� �方法を見つけた。だから助かっている。空条承太郎』。
プッチも徐倫の生存を感じ、彼女が落ちた方向へ急ぐ「どういう事だ?何をしたんだ?空条徐倫!また"ジョースターの血統"が私とDIOの目的を妨げるというのかッ!?」。
焦るプッチにアナスイが攻撃を掛けたが完全に見切られていた「お前は私にとって試練の内にも入らない」。逆にC-MOONがアナスイにアッパーを決めた。バグオァッ!プッチは直感で異常に気付く「はっ!戻れッ!C-MOON!そいつはアナスイではないッ!」。それは亡くなった観光客の遺骸をダイバー・ダウンがアナスイの骨格に変えた囮(おとり)であり、自身はプッチのすぐ背後に迫っていた。「射程内に入ったッ!くらええぃー!ダイバー・ダウン!」アナスイの手刀がプッチの� ��頭部を直撃!…しなかった。プッチは自分の顔面をスタンドで内側に窪ませ攻撃をかわした。頭部が元に戻る「お前は私にとって、釈迦の手の平を飛び回る孫悟空ですらない。ウシャアアアア!」。
プッチがアナスイにラッシュを叩き込もうとした瞬間、舞い戻った徐倫がプッチを攻撃した。激しい攻防の中でC-MOONは徐倫の両腕にパンチを入れる。バギャアァァッ!プッチは吠える「一発ずつ命中ーッ!これでお前は"両腕"を失ったァアアーッ!」。メギャ、メギャ、ヒュンヒュンヒュン。なんと徐倫の腕は裏返らず、『メビウスの輪』を作っている。胸を打撃すると胸もメビウスとなって攻撃を吸収した。ヒュンヒュンヒュン。プッチの額を冷汗が流れる「裏も表もなければ裏返りはしない…裏も表もない『無限の輪』!" 糸"でなら作れる…」。ドドドドド。
何も私たちの間を邪魔することはできない
プッチはなおも攻撃を加えたが、ことごとくメビウスの輪で無力化され作戦を変えた。徐倫の周囲をグルグル動き、引力を掻き回して警備員の亡骸を引き寄せる。「来たぞッ!これを待っていたッ!」プッチは警備員のピストルを抜き取った「手に入った!」。弾を装填しながら振り向き、即座に徐倫の顔面に向けて、至近距離から引き金を引いた!ドンドンドンドン!4発発射、絶体絶命ッ!
ドォーン!その瞬間、時間が止まった!バゴバゴバゴバゴッ!時が動き始めると徐倫の姿はなく、弾は背後の壁にめり込んだ。「なにィッ!!」バグオォア!スタープラチナの拳がプッチの顔面を直撃、吹っ飛んだプッチはビジター・センターの 扉に頭から突っ込んだ。「ガハッ」。プッチの目に徐倫を抱きかかえる承太郎とエルメェスの姿が映る「じょ…空条承太郎と…エルメェスッ!」。
エルメェスは手に銛(もり)を持っていた。銛は『キッス』のシールで2本にされてC-MOONの射程外(3km先)の上空からSPW財団がビジター・センターへ撃ち込んだもの。シールが剥がされ1本に戻ろうとした時、掴まっていたエルメェス達を一気に引っ張り上げてきたのだった。
承太郎、徐倫、エルメェス、アナスイ、エンポリオがプッチの周囲を包囲する。エンポリオ「ついに囲まれたぞ、プッチ神父。36時間後の(新月で)"完成した能力"が得られるなんてお前のただの幻想だ!」。
プッチは流血しつつもニヤリと笑う「違うな…エンポリオ」。逆さまになったプッチの体が、反転した重力の影響でドアのフレームと共に浮き上がっていく「理解したぞDIOッ!"新月"は待たなくていいッ!」。スタンドを最終進化させる為の新月の強い重力を待たずとも、地表から体を浮かせて「新月と同じ条件」となる重力の"位置(高さ)"を探せば良いと気付いたのだ「落ち着け!位置を探すのだッ!…素数を数えて落ち着け!13、17、19…」。
承太郎は激しい戦いで傷だらけになった娘の手を握った「成長したな…徐倫」。エルメェスがピストルを拾い上空のプッチを撃つ。C-MOONがプッチの前で弾をガード。「スタープラチナ ザ・ワールド!」ドォーン!再び時が止まった(最大5秒)。承太郎はプッチに� �けて銛を放つ。ズシュゥゥゥゥ!銛は頭部への直撃コース、静止時間内に投げられたので気付かないはずだ。時は動き出す。「ウシャアアアア!」C-MOONがエルメェスの弾丸を殴る一方、プッチはギリギリで銛の直撃を避ける。DIOとの融合ゆえか、プッチは停止した時の中を見ることが出来たのだッ!
エルメェスが叫ぶ「スペース・シャトルが浮いてるぞォォーッ!神父が展示用シャトルに乗り込んだァーッ!」。次第に全身が発光するプッチ!「感じたぞッ!今、承太郎が銛を撃ち込んで来たあの位置で感じたッ!私を押し上げてくれたのはジョースターの血統だったッ!」。光り輝くプッチの側にアナスイが接近し左ストレートを出す「くらえッ!ダイバー・ダウン!」。ゴアア!ピカッ!新スタンドが現れ防御する。「もうC- MOONではない…『天国の時』はついに来た…完成だッ!重力のパワーがッ!この体を貫いて来るぅぅッ!」。カッ!さらにプッチは輝きを増し、付近は何も見えない。徐倫たち全員が真っ白に発光する光に包み込まれた。
●ミニ・コラムその15〜アナスイの恋
「徐倫のひとつの事を見つめるあの『集中力』…きっとオレは彼女のそれに引き付けられて、ここにいるのだ。『集中力』は美しさを際立たせる…その瞳…そしてそのうち、このオレのことも見つめさせてやる…その集中力で…」(73巻)
ナルシソ・アナスイは子どもの頃から電話を見れば電話を分解、時計を見れば時計を分解するという"分解症候群"だった。10歳の時には近所のポルシェを分解して入院させられた。� �1歳のある日、付き合っていた恋人の家を訪れ、彼女が他の男とベッドにいるのを見てしまう。彼はその場で2人が永遠にくっつかないように"分解"した。アナスイの「心」は死んだ。殺人鬼として刑務所に入れられ4年が経った時に出会ったのが徐倫だった。アナスイは徐倫の常に前向きな生き方や父親の為に「覚悟」を決めて戦っている姿に惚れ込む。
F・Fから「懲罰房で孤立している徐倫を守って欲しい」と頼まれたアナスイは、徐倫との"結婚"を前提に協力を約束した。唖然とするF・Fに「祝福しろ。結婚にはそれが必要だ」と我が道を行くアナスイ。徐倫の救援で懲罰房に潜入した彼はさっそく彼女に「愛してるぜ…ここに来るのがとても楽しみだった」。徐倫はポカ〜ン。しかし、アナスイは大胆に見えて細かい工作� ��忘れない。ケンゾー爺から徐倫を助けた時、彼女はケガで気を失いかけていた。アナスイはF・Fに"オレが守ったことをよく理解してないのかもしれない。もう一回しっかり彼女を抱きしめておきたい"と、階段を上がる徐倫の足をアナスイの前でつまずかせてくれと頼む(古典的!)。
最初に徐倫の心が少し動いた(1ミリくらい)のは、彼女がDIOの骨に触れて体内から植物が生えた時。「こうなってしまった以上、あたしから離れた方がいい…触ったらあんたまで感染するかも」。するとアナスイは"感染したって構うもんか"というように、徐倫の皮膚に咲いた花をパクリと唇ではんだ。
その後、アナスイは折に触れて徐倫に恋心を伝えるが、徐倫は聞いているのか、いないのか、まともにとりあってくれない。そしてアナスイが戦いのドサクサにキスしようとすると非情な右アッパーをアゴに決める(笑)。アナスイがなぜそこまで命懸けで徐倫を愛し守るのかは、ウェザーが死んだ時に語られる--「死んでいたオレを生き返らせてくれたものの為には生命を懸けれる」と。刑務所の中で魂が死んでいた彼は、運命を切り開いて進む徐倫と出会い生き返った。徐倫は文字通り命の恩人なのだ。ケープ・カナベラルの決戦を前に、プッチがいるビジター・センターに視線を定めた徐倫を、アナスイは熱い眼差しで見つめ心中で呟く"そうだぜ…その目だ…徐倫。その遠くを見る表情…オレの心が燃えるのはその仕草だ。ウェザ� �や承太郎以上に君を守れるのはこのオレだ!君はそのうち…自分の身を…このオレに包んで欲しいと願うようになるんだ"。
ぶっちゃけ、承太郎よりも徐倫を守れるというのは自信過剰に思えるけど、彼はC-MOONとの戦い以降、本当に捨て身となって全身全霊で徐倫を守り続ける。C-MOONの攻撃が"物質を裏返す"と分かった時、アナスイはストーン・フリーに素早くダイバー・ダウンを潜らせ、彼女をかばって先に攻撃を受けた。「(ダメージは)オレの体が代わりに引き受けた!」「アナスイ…」。
コラムの最後はそんなアナスイを思わず応援したくなる一番のエピソード。ケープ・カナベラルに向かう車内での出来事。刑務所から続く連戦の疲れが出た徐倫は、眠ってる間にアナスイの肩にもたれ掛かる。息を呑むアナスイ「カワイイ…おお…なんて…なんてカワイイんだろう…オレにもたれ掛かって眠っている…徐倫が…」。"そ…そうだ!"と彼は懐から美しい指輪を取り出す。"今言わなきゃいつ言うっていうんだ…このオレの気持は真実だ。刑務所の調達屋から大金払って指輪も買った"。そして彼女の指にソッとはめる「目が醒めたなら…このオレの気持を…受け止めて欲しい」。
「お!見ろ!」エルメェスの叫び声で目覚めた徐倫。車が湿地帯に入り路肩に巨大なワニがいた。寝ぼけた徐倫「これでもくらえッ!」ビスゥ!「やったあぁーっ、命中だあー!」。「はッ!」アナスイの顔が青ざめる。「まさか!じょ、徐倫!今何投げたああああ!みっ…見せろォオオー、手…て…手を見せてみろォオオオ!」「え?なに?」。アナスイは徐倫の両腕を握り声を震わせる「両手を見せろってんだあああ!」「なんだ?なんだ?」。エルメェス「おいおい急になんだアナスイ」エンポリオ「ちょっとアナスイ、何暴れてんだい?」。アナスイの両目から涙があふれる「君はあぁ〜!君はまさかぁあ〜!」。※ファ、ファイト〜!アナスイ!
哀!アナスイの男泣き! クールな登場時と別キャラ(笑) | 想いを込めて… | 寝顔に感動するアナスイ(79巻※左のコマも) |
(シーン49)第80巻 加速する世界/ジョースターの血統 (注)画像は右→左読み
ドグオォォアア!ケープ・カナベラルに向かった米軍の救援ヘリが、操縦不能となって墜落する。プッチの言う『天国の時』の到来と共に、徐倫たち5人は閃光で気を失っていたが、その間に世界はとんでもないことになっていた。時間が徐々に加速しているのだ!アイスクリームは買った瞬間に全て溶け、自動扉が足を挟み、ケータイの通話料は瞬時に3万円となり、トンカツにソースをかけるとテーブルがソースの海になった。承太郎が異様な気配を肌で感じて時計を見ると、長針がグルグル回っている。体感では1時間が2分しかない。太陽が傾くとすぐに� �空となった!
愕然とするエンポリオ「色んなものが早く動いている…き…機械だけじゃあなく、全てのものが…!まさかッ!これが能力の『完成』!?」。承太郎は"もしヤツだけがこの加速についていけるとしたら"と考えゾッとする。「徐倫、逃げるぞ。この場所はまずいッ…」。徐倫は感覚でプッチの移動を感じた!「ど…どこだ!?動いている!隠れながらこっちに近づいてくるッ!」。5人はどの方向からプッチが接近しても発見できるように、ビジター・センターの屋根に登り、徐倫、エルメェス、エンポリオ組とアナスイ、承太郎組に別れて周囲を見張った。
プッチを警戒する中、アナスイは承太郎に徐倫のことを切り出す「オレは全力であなたのお嬢さんを守ります。この闘いは生き抜く…だからお嬢さんとの結婚をお許し下さい」「今…なんて言った?」「あなたが『許してくれる』だけでいいんだ…それだけでオレは救われる」。アナスイは殺人を犯した自分の心を呪われたものと考え、徐倫の純粋な魂と触れ合うことで浄化されていくのを実感していた。承太郎は黙ってアナスイの目を見ている。「何もオレは最初から…徐倫と結婚できるなんて思っちゃあいない…オレの殺人罪は事実だし、徐倫がオレの事を好きになってくれる訳がない事も知っている…。だが、徐倫が父親であるあんたから受け継いでいる清い意志と心は…オレの心の闇を光で照らしてくれている…崩 壊しそうなオレの心の底をッ!今のオレには必要なんだ…!一言でいい…『許す』と。ここを生き延びたなら結婚の『許可』を与えると!」。承太郎は"許す"も何も、まだ徐倫の気持を聞いておらず、大切な一人娘を簡単に託せる訳がない「…言ってる事が分からない…イカれてるのか?この状況で」。※承太郎ってばクールすぎ(汗)。
ピトッ。その時、何も知らない徐倫がアナスイの胸に手を置いた「アナスイ。集まった方がいい。皆も散らない方が…」。徐倫は無意識にアナスイの首に腕を掛けて引き寄せる。承太郎はそれを見て、娘が少なくともアナスイを嫌っていないことは分かった。エルメェスは空を見上げて雲のスピードに目を疑う「あの雲の流れる動きッ!このままどうなっていくんだ!?こんな能力、� ��うやって倒すんだッ!」。5人は背中合わせに円を作った。
テラスのテーブルの下に動くものが承太郎に見えた「スタープラチナ ザ・ワールド!」。ドォーン。スタープラチナが周囲を探る。"ヤツに近づいて直接叩かなくては…時を止められるのは『5秒』しかない…やれやれだ…いないぞ…動いたと思ったのは気のせいか…限界だ…時は動き出…!"。承太郎は時間切れの直前、背後のヤシの木のうち1本が不自然に曲がっていることに気付く。その先端にプッチがいた!"木の弾力!バネのように飛んでくる…!!"。時が動き出す!ゴアアアアァ!5人の目の前にプッチの影!スカアァ!承太郎の首にスパッと切り傷が入った!「と…父さ…!」フォン!プッチがさらに移動する。エンポリオ「おねえちゃんッ!後ろだあああ!また来るゥゥーッ!!」ゴオアア!ドォーン!再び時間静止� ��
承太郎の首への攻撃が致命傷にならなかったのは、アナスイのスタンドが承太郎の体に入り、代わりに攻撃を受けてくれたからだった。承太郎は流血しつつも、今まさに攻撃を受けようとしていた徐倫、エルメェス、エンポリオの体を引き寄せる。だが、それが精一杯だった。5秒ではプッチに反撃できない。"短すぎる…!連続して時は止められないッ!一度止めたら、次は何呼吸か置いた後だ…!今の神父に対抗できるのは、時を停止させたこの『間』だけだというのに…!限界だ…"。時が再び動いた瞬間、スタープラチナがオラオラを叩き込んだが、加速中のプッチはこれを見切った。目の前の承太郎の攻撃をかわしたのだ。
uはこれまで私のことを思いますか
勝利を確信したプッチは、新しく誕生したスタンドを従えて、徐倫達から10mほど離れて悠然と立つ。圧倒的なその自信。「始末する順番はアナスイからだな。最後にひとつ言っておく。『時は加速』する。これはお前たちを始末する為の能力ではないし『最強』になる為の力でもない…この世の人類が真の幸福に導かれる為の力なのだ。名を冠すなら『メイド・イン・ヘブン』!これからお前達が死ぬのは人類の幸福の為の単なる犠牲に過ぎないのだ」。
※物理学の世界では、重力が重いほど時間の進行は遅くなるなど、「重力」と「時間」の間に特別の関係があることが証明されている。『メイド・イン・ヘブン』は地球や月や全宇宙の重力を� �用して、時間を少しずつ加速している。
ドゴオァーッ!エンポリオが拳銃をブッ放した。だがプッチは加速して余裕でかわす。シュゴオォォォ!徐倫「だめだ、銃弾なんて当たらないッ!」「違うよおねえちゃんッ!狙ったのは隣のビルの壁面だッ!エルメェスが弾丸に『シール』を貼ったッ!弾丸は2個になっている!!皆、つかまるんだーッ!!」。5人に襲い掛かったメイド・イン・ヘブンの拳は空を切った。"シール"が剥がされた弾は1個に戻ろうとし、彼らの体は隣のビルへ引っ張られる。徐倫はストーン・フリーで5人をしっかり結んだ。
シュバッ!プッチはすぐに追跡を開始。地上を進むプッチはなんと5人を追い越し、先回りして前方で待ち構えている。アナスイ「エンポリオ!次の弾丸をさらに撃てッ!海に出ろッ!周囲が海ならひとつだけヤツを殺る方法があるッ!海面に露出している岩に向かって撃ち込めーッ!」。ドゴオォーッ!2発目を発射!5人は上空で方向を変え湿地帯の上を抜けていく。ドギャアァン!バショオァァ!プッチはまた追って来た! (この辺も単行本を読んで欲しい!荒木先生のスピードの描写は絵から風が吹いて来る!)
アナスイ「いいか…どんなに『加速している時の中』を神父が進んで来るとしても、スタンドは一体しかない!しかも攻撃パワーは並の上といったところ!ヤツは一人ずつ"順番"にオレたちを攻撃するしかないんだ。ヤツを倒す方法はそこにある!!ヤツがオレの体に攻撃を加えた瞬間…承太郎さん…オレはあんたに"合図"を送る。その瞬間に『時を止めて』あの野郎をあんたが殺るんだッ!!」。4人は驚いてアナスイの顔を見る。
承太郎が"本当にアナスイを最初に攻撃するか分からない"と指摘すると、アナスイは"この距離なら全員の肉体にダイバー・ダウンを潜らせて守ることが出来るし既に入っている"と答える。「だから� �番が誰から攻撃されようと、まず"ダイバー・ダウン"が最初のダメージを引き受ける。そして"合図"もスタンドを通じてあなたの体内で分かるはずだ。いいですね?時を止めるのはオレへのヤツの攻撃の後です!」。
この作戦なら、アナスイが死んでも他の4人は生き残ることが出来るというのだ。
エルメェス「アナスイ、お前…"相討ち"ってことか!?」。徐倫は目を見開いたまま言葉が出ない。エンポリオ「む…無理だッ!ヤツの次の攻撃は絶対致命傷が来るッ!」。アナスイはニヤリと笑う「かもな。だが急所まで達しないうちに"合図"を送れるかもしれない…最近オレは運がいいからな…。脱獄してからオレは命だけはツイてる…この勢いで生き残ったら…その時は…徐倫に� �婚でも申し込むとするかなああ。ククク…ハハ…とか言ったりして…ハハ」「いいわ」予想外の返事にアナスイは息を呑み、父は娘の顔を見た。「いいわ、アナスイ…申し込んで…この状況で"絶望"しているから言ってるんじゃあない…。あなたの考えには希望がある。暗闇なんかじゃあない…。道が一つしかなくても、それにかすかでも考えがあるなら、それはきっと上手くいく道」。アナスイが惚れた理由がまさにこれだ--徐倫は絶対に希望を捨てない。アナスイは背中を向けたまま肩を震わせた。
エルメェス「いるぞーッ!既にあの岩の上にいるッ!エンポリオォーッ!」ガァーン!ザバババ!エンポリオがとっさに撃った弾は浅瀬に着弾した。5人は再び円陣を組み外側を向く。� �ショオ!海面にプッチの進む軌跡が走る。アナスイ「右に回り込んでるぞォオーッ!」。承太郎「しぶきのせいでヤツの移動方向が分かりやすくなった!」。
上空の雲はますます速く移動し、どれもロケットのように水平線へ飛んで行く。グオオオ!エンポリオ「ばかなッ!太陽がすごい早さで昇って来たぞーッ!」。承太郎が腕時計を見ると長針が高速で回転している。ザババババ。エルメェス「時がさらにもっともっと加速してんじゃあないのかぁー!」。エンポリオ「な…波の動きが見えないッ!押したり引いたりする波の動きが早すぎるッ!ヤツの移動がわからないッ!」。ドザザザザ。海面が泡立ち、プッチの軌跡が見えなくなった。シュバ!アナスイの足元に大きな水しぶきが立ち、次の瞬間に彼の胸から鮮血が溢れた!� ��ナスイ「今だッ!時を止め…」ドォーン!時間が止まった!
アナスイの胸を貫通したメイド・イン・ヘブンの左腕をスタープラチナが掴む!ガシィィッ!「つかんだッ!!くらえプッチ神…!」承太郎の血の気が引く。掴んだ腕はプッチのスタンドではなくストーン・フリーだった!「なにィイイイ!徐倫のスタンドをアナスイに…!!」。プッチはストーン・フリーの腕をアナスイの体に突き刺していたのだ!
承太郎「一手…遅れた!あと4秒!このままヤツにとどめを刺さねば、再び加速の中へ身を隠されるッ!停止している間に全てを叩き込まなくてはッ!あと3秒!」ザバァァッ。承太郎はプッチに接近する。あと2秒ッ!この時、承太郎はプッチのスタンドが本体から離れて徐倫の背後にいることに気付いた。そして娘には無数のナイフの雨が放たれていた!(既に1本は首に刺さり始めている)。アナスイは即死状態であり、これがプッチを攻撃する最後のチャンス。だがプッチを攻撃すれば、その間に娘が死ぬ。承太郎が吠える!「うおおおおおおおおおおおお!」。
承太郎は娘の命を優先した。先に徐倫を引き寄せてナイフの軌道からズラし、すぐに反転してプッチに攻撃。「オラオラオラオラ!」しかし、時が動いてしまう。スタープラチナの拳は空振り、プッチは承太郎の背後をとった。「二手…遅れたようだな。ジョースター家は血統ゆえに誇りと勇気から力を得、運命に勝利して来た。だが!弱点もまた血統ゆえに。空条承太郎…娘がお前の弱点なのだ」。承太郎の危機に気付いたエルメェスがプッチを背後から攻撃!「うしゃあああああ!」ゴォアアア!加速空間からのメイド・イン・ヘブンの手刀は巨大なカミソリそのもの。"キッス"は切断されエルメェスは絶命、そして…。
ピッ。承太郎の帽子が頭頂部から裂け、その亀裂は顔面を走り彼のアゴに達した。承太郎は目を見開いた まま崩れていく。徐倫は大半のナイフを避けたものの、1本が脇腹に突き刺さってしまう。すべて一瞬の出来事だった。エンポリオの目に、海面に漂う4人の姿が映り号泣する「うわあああああああああああああ!」。
「うわあああああ!」エンポリオ慟哭! | 承太郎の頭部に亀裂! | アナスイに続いてエルメェスも やられてしまう。悪夢!! | 「二手、遅れたようだな」 承太郎は背後をとられた! |
「因縁は全て断ち切っておかなくてはならない」。隣にはいつの間にかプッチが立っている。「かわいそうとは思わないし、逃がすわけにはいかない。決着は全てつける。私はお前にとって母親の仇だからな」※エンポリオの母はスタンド使い。プッチに能力をコレクションされ殺された。
エンポリオは泣きながら拳銃を構える。「撃って来い…その方が殉教者らしくこの世を去って行けるぞ」「わああああ!」ドゴオァーッ!引き金を引いた!「『運命』はここで終わりだ、エンポリオッ!」プッチは弾をかわし手刀を打ち下ろす!その瞬間エンポリオの体が強力な力で水中に引きずり込まれる!「え!?」ザボォン!プッチは承太郎達の方を振り返った。徐倫がおらず3人しかいない。「空条徐倫!!」「オラオラオラオラ!」ドババババ!徐倫は脇腹のナイフをラッシュと同時に"お返し"する。パクッ。プッチは右顔面を大きく切られ片目を失った。「ジョースターッ!!逃れられると思うのか!!お前らが泳ぐスピードはッ!走る事より遅いというのにッ!」。
ゴッ!水中に入ったプッチの前に数頭のイルカが泳い� ��いた。そして先頭のイルカにはエンポリオがストーン・フリーで縛られていた。徐倫もイルカに引っ張られる"肝心なのは距離よ、プッチ神父!短い距離なら追いつける。でもイルカより疲れずに長い距離を泳いだり潜ったりする事ができる?時の加速は関係ない!"。イルカが水面まで浮上し、エンポリオは呼吸と共に徐倫へ叫ぶ「ロープをたぐって早くイルカまで来てーッ!」。徐倫の
脇腹の出血は止まっていない。
「アナスイが自分を犠牲にして父さんを守ってくれたから、あたしは今…かろうじて生きている。エルメェスが神父を攻撃してくれたから、ロープを伸ばしてイルカを捕まえる間が出来た」「早くッ!早くッ!ここまで来ておねえちゃん!逆にロープが伸びてるぞーッ!」。
「エンポリオ、� ��たしは行けない…神父はあたしの中のジョースターの位置を感じ取ってるわ。どこへ逃げてもあたしも感じるし、ヤツも感じて追跡してくる。あたしがいたら、あんたは逃れられない!」「え?」「一人で行くのよエンポリオ。あんたを逃がすのはアナスイであり…エルメェスであり、あたしの父さん空条承太郎…生き延びるのよ、あんたは『希望』!!」「ま…まさかッ!待ってッ!待ってッ!おねえちゃん、やめて!ロープを早くたぐり寄せてェエエーッ!」。
既に、アナスイ、承太郎、エルメェスの亡骸は、半分近くまで白骨化している…。
「ここはあたしがくい止める!」ブチィッ!徐倫は"ロープ"を切った!「うわあああああ!」「来いッ!プッチ神父!」彼女は身構えてプッチを待ち受ける。「ストーン・フリィィィーッ!」「絶対に逃さんッ!絶対にッ!」ドバドバドバドバ!バショア!メイド・イン・ヘブンとの一騎打ちでストーン・フリーはバラバラになった。エンポリオ絶叫!「おねえちゃああああああーん!」。ドドドドド。空条徐倫、死亡。
(シーン50)第80巻 ホワット・ア・ワンダフル・ワールド (注)画像は右→左読み
プッチは親友DIOが求めていた"時を加速させる能力"を完成させ、時間はさらにスピードを増していき、全世界は大混乱に陥っていく。もはやプッチを阻止 できるスタンド使いは誰もいない。「お…おい、何だぁああ〜!あれ太陽かッ!太陽の形が円じゃあねえッ!長く帯状に見えるッ!」「また夜だ!」「朝だ!」「また夜だッ!」「生モノは腐ってもう食えないッ!」「カン詰めを買い占めろ!」「うわーっ!修復したばっかのミケランジェロのフレスコ画がぁぁぁ〜!」「なんなんだ!!この空はッ!!」「太陽はどこなんだーッ!」「あの輝きの"線"が太陽なのかぁーッ!!」。グオングオングオン。街中の建物が次々と朽ち果て倒壊していく!「昼なの?夜なの?」「さ…寒くなって来たッ!」「気候も変わっているぅぅーッ!」。
※プッチの能力、『メイド・イン・ヘブン』は、生きているものには発動しない。花が急に咲くことも、鳥や昆虫が速く飛ぶこともない。生物� �外の"時"だけが加速するのだ。
エンポリオはなおもイルカにしがみついている。彼は徐倫たちのおかげでプッチから逃げ切った!しかし目の前にプッチがいないだけで、メイド・イン・ヘブンの支配下にいることに変わりはない。海岸沿いの岩場の光景を見てエンポリオは驚愕する「岩の形が波の力で変わって行くーッ!!ど…どうなっているんだ!!?"時の加速"は止まらないのかぁーッ!どこまでッ!どこまで"加速"するんだァーッ!」。泣き叫ぶ彼の帽子や衣服は風化し、散り散りになった。やがて海底が隆起して大気にさらされ、地平線まで続く巨大な地割れが始まった!「うわぁあああ!地形が変わって行くぅぅぅぅぅぅーッ!」。ゴゴゴゴゴ。
ここで、iは、ベンジーマデンが持っているギターを得ることができますか?
次の瞬間、大地が消滅し、全生物だけが空間に残ったッ!
あらゆる動物や植物、昆虫や魚がエンポリオの眼前にいる。そして足元には銀河が見えた。宇宙ッ!
「なんなんだッ!?ここはッ!!"生き物"だけ…!?どこなんだ!?ここはぁぁーッ!」。
続いて彼らは巨大な光源に包み込まれていく!「う、うわっ!うわああああああ!」。
ここに、エンポリオや歴代ジョースターが存在した宇宙そのものが、時の加速の果てに終焉を迎えた。
エンポリオは信じられない場所で意識を取り戻す。グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所の中だ!「この場所は!!知っているッ!面会室前の廊下だッ!」。面会室からは話し声が聞こえる--「今頃ノコノコ来やがってッ!父親づらしてんじゃあねーッ!」「お前を助けたいんだ。すぐにここから出してやる」。エンポリオは耳を疑った。この会話は4ヶ月前(2011年11月)に承太郎が徐倫に会いに来た時のものだ!(シーン44参照)。
あの2人なのか!?しかし面会室の様子を覗いてみると、髪型や服装が似てはいるものの別人に見える。"なんなんだ!?…この2人は!?で…でも、すごくッ!すごく!!似てるッ!でも違うッ!"。
ガラアアア。面会室のドアが開き一人の男が入って来た。…プッチ神父!徐倫のナイフで切られた顔の傷からは、まだ流血が続いていた。プッチは黙ったままエンポリオを片目で睨みつける。
「"時の加速"の行き着く究極の所!『宇宙』は一巡したッ!"新しい世界"だッ!人類は一つの終点に到着し、"夜明け"を迎えたのだッ!」。
プッチがメイド・イン・ヘブンを発動させたのは2012年3月。エンポリオは過去の2011年11月に戻ってしまったのではなく、宇宙一巡後の、新しい地球の2011年11月にやって来たのだ!
※新しい地球も環境が同じなら歴史も似通うはず。大気ができ、生命が生まれ、恐竜が滅び、人類が繁栄するというように。メイド・イン・ヘブンで"加速時間"を旅してきた生物には、これが一瞬の出来事として感じられた。
プッチがエンポリオに向かってきた。「空条徐倫はもういないッ!魂さえも…。承太郎も消滅したッ!…アナスイもエルメェスも!『死人』は来れないのだッ!私に相反する因縁は全て『向こう』に置いて来たのだ!!エンポリオッ!お前は今ここでッ!絶対に消えなくてはならないッ!」「うおおおお!」。エンポリオは刑務所内にある彼の秘密の部屋に逃げようとして、廊下の二人連れの刑務官とぶつかり転倒し、相手も書類を落とした。
男A「おい、子供だ」男B「どこから入ったんだ?」。この時エン ポリオの頭には、とっさに男Aが書類を踏んで転ぶイメージが浮かんだ。それは男Bも同じで"こいつ…そこの床でスッ転ぶぞ…でも何で急にオレがヤツの事そんな風に思いつくんだ…"。一方、男Aも胸騒ぎに襲われた"オレ…もしかしてこれから書類踏んづけて転ぶのか?用心しよう"。エンポリオが逃げると2人は慌てて追って来た。ところがエンポリオの正面からプッチがやって来る。「うわあああ」焦って反転したエンポリオは男Aの足元にぶつかり、皆の予感通りに転倒した。これらは全て一度体験したことだったのだ!
プッチは言う「未来を一巡して『新しい宇宙』が始まったッ!運命も同じ様に繰り返されるッ!人の出会いとは"重力"であり、出会うべくして出会うものだからだッ!人類は未来の全てを体験してこの世界へ到達した!"加速した時"の旅で、自分がいつ事故にあい、いつ病気になり、いつ寿命が尽きるのか?すでに体験してここに来た!頭脳や肉体ではなく、精神がそれを体験して覚えているのだ!それこそ『幸福』であるッ!全員が未来を"覚悟"できるからだッ!"覚悟した者"は"幸福"であるッ!悪い出来事の未来も知る事は"絶望"と思うだろうが、逆だッ!明日"死ぬ"と分かっていても"覚悟"があるから幸福なんだ!『覚悟』は『絶望』を吹き飛ばすからだッ!人類はこれで変わるッ!これが私の求めたも� �ッ!『メイド・イン・ヘブン』だッ!」。(妹ペルラの悲劇や、神父として人々の懺悔を聞き続けた事が彼をこう思わせたのか)。
エンポリオは隠れ場所を求めて逃げ惑うが、アクシデントにあって階段を転げ落ちる。そんな彼をプッチが見下ろす「細かい出来事は違っても、運命は決して変えられない…起こるべくして起こる必然なのだッ!私以外はな…」「うわああああーっ!」「お前をこのまま生かしたら、いずれ私を倒そうとするだろう。絶対に生かしてはおけないッ!」。
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●プッチはなぜ『時の加速』を、"本当の意味での一巡"となる、カナベラルの直前に一時停止したのか。
プッチは時の加速中にカナべラルの海でエンポリオを見失った。加速後に起きた体験が運命として繰り返される ならば、新しい宇宙でも成長したエンポリオはプッチと対立するだろうし、たとえ徐倫たちが存在しなくても、やっぱり何らかの形でプッチはケープ・カナベラルでエンポリオを見失うことになるだろう。だからこそ、カナベラルの前の段階、つまりメイド・イン・ヘブン発動前の刑務所の時点で、エンポリオを始末する必要があったのだ。プッチが"因縁を断ち切って未来へ行く"ために、これは避けて通れぬ道だった。
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エンポリオは壁際に追い詰められる。「覚悟を決めろッ!覚悟は『幸福』だぞッ!エンポリオ!」「うああああ」「これが人類の為なのだぁーッ!!消えろエンポリオオオオオオオ!」「うわああああ!」ズギャアアア。メイド・イン・ヘブンがエンポリオの顔面に右ストレートを放っ た!ドグシャアアーッ!
この瞬間、プッチは拳の先に違和感を感じた「……」。なんと!エンポリオはウェザーのDISCをプッチの手で頭に挿入させていたッ!ズブッズブッズブッ。「運命は決まっていて(プッチにしか)変えられない…のなら…、お前に変えてもらう事にしたよ…」。ドドドドド。「ウェザーがお前に殺される時DISCにして取り出したウェザー・リポートの能力!!徐倫おねえちゃんが僕に持っててくれって授けてくれたDISCだァァーッ!」。
プッチはメイド・イン・ヘブンで迎え撃つ「お前の行動は自分の悲鳴をさらに地獄のラッパにするだけのことだ!」。時計の針がグルグル回り出した!「再び"時を加速"させたーッ!我が大いなる目的の前で、崩れ落ちる自分の貧弱さを思い知れェエーッ!」プッチはエンポリオの背後に回り込み、メイド・イン・ヘブンの手刀を振り下ろす!
エンポリオが口を開く「本で読んだことがある…生物にとって最も身近にある"猛毒"は『空気である!』と。『酸素』の濃度は空気中では40%以下でなくてはならない…100%純粋な酸素は猛毒で生物を死に至らしめる!高濃度の酸素は"鉄"ならアッという間にサビで腐食させ、炎なら爆発し、人体の細胞分子なら電子を奪って次々と組織を破壊していく!大量に吸うとまず手足の先から麻痺し、立つことが出来なくなる!いくら"時を加速"しようと関係ない…"ウ ェザー・リポート"は既にこの部屋に純粋酸素を大量に集めていたんだ!」。
ピタァァァ!倒れているプッチのこめかみにウェザー・リポートの右拳が上から押し付けられる。メキッ!メシィ!「うおおおおーッ!や…やめろ…エンポリオ…こんな事を!…ウェザーを止めろッ!!エンポリオッ!」。ミシィッ!メキメキメキ。「ケープ・カナベラルの後ならいくらでも命を捧げようッ!私が(今死んだら)ここまでやって来た事が"起こらないという"事に変わってしまうんだッ!人々は時の旅で見た運命を見なくなる!『覚悟こそ幸福』という事を思い出してくれッ!」しかしウェザーの拳は止まらない。バキッ、バキバキ。プッチの頭が次第に潰れていく「このちっぽけな小僧があああ!」ゴバッ!とどめはウェザーの両拳ラッシュ!「ああああがあああ!ぐあばあああ!」ドシャアアーッ。エンリコ・プ ッチ死亡。
※プッチは「覚悟こそ幸福」という信念を持っていた。プッチの過去には同情すべきものがあるし、彼がそう考えるのは自由だ。人によっては共感を覚えるかも知れない。だが全ての人が同じ考えではないのだ。いつ死んでも悔いがないように日々を全力で生きている者、将来が分からないからこそ果敢に運命を切り開いて行く者、その他、未来など知りたくない者はいくらでもいるだろう。また誰もがプッチのように精神的に強いわけじゃく、中には未来を知った結果、覚悟できずに恐怖で自我が崩壊する者もいるだろう。人によって幸福のカタチは様々だ。しかし、プッチは自分の価値観を全ての人に押し付けようとした。
エンポリオは76巻でプッチを許せない理由として「全ての人々の幸せも人生も犠牲にして行動している」ことをあげている。プッチが歴代ジョジョの宿敵、DIO、カーズ、吉良、ディアボロら4人と決定的に異なるのは、彼らが自身を「悪」と自覚した上で、己の征服欲や野心、或は歪んだ性癖など、欲望を満たす為に行動していたことに対し、プッチは自分のことを「善」と信じ微塵も疑わなかったことだ(それこそ死の瞬間まで)。一方、プッチとボス4人が共通している部分は、目的達成の為には他人を犠牲にし、利用しても許されると考えていること。善悪の概念は国や時代によって大きく変わるけれど、荒木先生は"絶対普遍の悪"があるという。それは5部のブチャラティの叫びに現れている。「吐 き気をもよおす『邪悪』とはッ!何も知らぬ無知なる者を利用する事だ…!自分の利益だけの為に利用する事だ…!」。荒木先生はいかに高尚な目的のためであろうと、自身の欲望の為に他人を踏み台にすることを"邪悪"と断罪し、だからこそ、善と信じて他人を犠牲にするプッチに対し、ウェザーにこう言わせたのだ「お前は…自分が『悪』だと気付いていない…最もドス黒い『悪』だ…」。
※『覚悟』について(サイト掲示板から)
・5部のジョルノの『覚悟』…5部で語られた"覚悟"は、暗闇の荒野に自分の力で進むべき道を切り開く"覚悟"。エピローグで語られたように、他者(スコリッピ)が用意した安楽な道を受け入れない。運命に従うだけの眠れる奴隷ではなく、たとえ苦難の道であっても目を開いて突 き進んでいく。
※【受け継がれゆく"黄金の精神"】
ジョジョという大河作品の中心に、ジョースター家とDIOとの戦いを軸として、他者から「意志」や「精神」を受け継ぐというテーマがある。
第1部4巻では死んでいくツェペリが「ジョジョ、継いでくれ、わしの意思をー!!」と叫び、作者は"そしてジョジョはまた受け継ぐ。彼の生き方とその精神� ��…"と語った。
第2部10巻ではシーザーが「俺が最期に見せるのは代々受け継いだ未来に託すツェペリ魂だ!人間の魂だ!」「受け取ってくれーッ!」と叫び、ジョセフに解毒ピアスを残すという形で生きる姿勢を伝えた。
第3部27巻では花京院が「ジョースター…さん、受け取って…下さい」と、ジョースターの宿敵DIOを倒す為の秘密を生命と引き換えに伝えた。
第4部のエピローグ(47巻)では、老ジョセフが「"正義"の輝きの中にある『黄金の精神』を仗助たちの中に見た」と言い、黄金の精神は吉良事件を知らない人々の心に自然と染み渡り、次なる世代にも伝わっていくと承太郎に語った。
第5部63巻でもエピローグでスコリッピが「彼ら(ブチャ・チーム)がこれから歩む『苦難の道』には何か意味 があるのかもしれない…。彼らの苦難が…どこかの誰かに希望として伝わって行くような、何か大いなる意味となる始まりなのかもしれない…」と、命を失っても『黄金の精神』(生きる姿勢)が他人に伝わるかも知れないと語り、ジョルノは物語の最後にスコリッピのセリフに呼応するかの如く「去ってしまった者たちから受け継いだものは、さらに『先』に進めなくてはならない」と締めくくった。
そして第6部のラスト・バトル"エンポリオVSプッチ"は、1部から始まったジョースターVSディオの戦いの総決算。ここにはもう徐倫や承太郎というジョースターの血統はいない。かつてツェペリやシーザーたちがジョースターに魂を託したように、今度はジョースターがエンポリオに"生き方と精神"を託している。エンポリオが受け継いだ『黄金の精神』は、DIOの精神(スタンド)を受け継ぎ『先』(メイド・イン・ヘブン)に進めたプッチとの対決になり、最終的に『黄金の精神』が勝利を収めた。ジョースターの血は絶えても、主人公がいなくなっても、『黄金の精神』が"吐き気をもよおす邪悪"の前に滅びることは決してない。肉体は朽ち果てても魂は生き続ける。死んだからって終わりじゃない。まさに人間賛歌だ� �
第1部から第6部まで、この一貫したテーマでひとつに繋がっているのだッ!!
具現化した精神力。エンポリオに徐倫の「黄金の精神」がウェザーを通して受け継がれる象徴的なシーンだ!
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プッチはケープ・カナベラルで始めた時の加速を、一巡後のケープ・カナベラルで終わらせることが出来なかった。これによって、新しい世界はプッチとの因縁がなくなった。
エンポリオの意識が戻ると、そこはグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所の「外」のバス停だった("内"ではなく"外"にいることが重要。プッチがいないのでエンポリオの母も所内で殺されず、エンポリオと刑務所の因縁が薄くなっている)。すぐ近くにはガソリン・スタンドがある。エンポリオが呆然としていると、ガソリン・スタンドの前でバスが停車した。
「なんで釣り銭ないのよ、このバス〜」そう言いながら、一人の女性が紙幣をガソリン・スタンドでくずす為に降りて来た。彼女はエンポリオに気付く「おっ!このバス乗るのか?いいトコ来たな!カネくずれる?このバス、小さいカネじゃなきゃー絶対ダメっつーのよ」。エンポリオは女性の顔を見て息を呑んだ。エルメェスそのものだった!彼が絶句してい� �うちに、運転手は彼女のカバンを投げ出して出発してしまう。「待て!なんで走り出すんだこの野郎ーッ!お前がもたついてるから行っちまったじゃあねーかよ!次のバスまで2時間待ちだぞッ!」「あ…あなたは…」。
この様子を側で見ていた男が声を掛けてきた。彼は帽子を深く被り、自分の車に寄りかかっている。「なぁ!オレの車、ガス欠なんだよ。ガソリン代とメシ代おごってくれるなら、好きなトコまで乗っけてやるぜ。そっちのボーヤもどうだ?」。男はこうして旅費を浮かせていた。エルメェス似の女性は断った「知らない人の車には乗っちゃダメってうちの姉ちゃん(!)が言ってた」。
ポツ、ポツ。そこに雨が降ってくる。男は帽子をあげて空を見た「嵐がくるな…きっと」。エンポリオは仰天する。男はアナスイに瓜二つだった!車の中にいる女性がエンポリオに声をかけた「乗りなよ坊や。怪しい者じゃあないわ。あたしはアイリン。彼の名はアナキス」。2人はこれからアイリンの父に会いに行くところで、許しがあれば結婚するかも知れないという。アナキスはアイリンの手をとって愛しげに頬にすり寄せる。アイリンは徐倫とそっくりだった。「ああ…あ…」エンポリオは眼前の光景に圧倒され声が出ない。
雨が本降りになってきたので、エルメェス似の女性は"絶対に10ドル以上は払わない、ケープ・カナベラルに寄ってくれ"と言い車に乗った。エンポリオは体がガクガク震えて動けない。それを見てアイリンが車から降りてきた。
「あなた名前は?ほら乗りなさいって!お金なんてとらないんだから。震えているわよ、寒いの?」彼女はそう言うと、自分の上着を脱いで彼にかけてあげた。エンポリオは驚愕する。アイリンの左肩に星型のアザがあったのだ!「エンポリオです…」「え?」「エンポリオ、僕の名前は…」エンポリオの目から次々と熱い涙が溢れてくる「僕の名前はエンポリオです」。
車が走り出してしばらくすると、雨の中をヒッチハイカーが立っている。アナキス「もう乗せないからな。十分だよ2人で…」アイリン「嵐が来るって言ったのあんたよ!」エルメェス似「停めなさいよ、カワイソーだって!」。アナキスがブレーキを踏むと、ヒッチハイカーの男が走って来た。エンポリオは涙を拭くのも忘れて、後部座席の窓から男を見つめている。まさにウェザーその人だった。 〔完〕
●第6部エピローグ〜荒木先生への感謝と共に
ジョジョの奇妙な冒険第6部ストーン・オーシャン。歴代ジョジョが活躍した地球の消滅。そして全宇宙の終焉と再生。130年前からのジョースターVSディオの因縁が、これほど巨大なスケールとなって締めくくられるとは想像もしなかった。第6部の冒頭とラストは、雨の中を主人公が恋人とドライブしているという全く同じシチュエーション。しかし、ヒッチハイカーを「はねる」ことが「拾う」ことに180度変わっている!次々と主要キャラが出会っていくラストの8ページは鳥肌が立ちっぱなしだった。その計算し尽くされた構成ッ!!
アイリンの肩に星型のアザを見つけた時のあの衝撃をなんて説明すればいいんだろう。単純に徐倫が死ぬことよ� ��も、別の人物が登場する方が"本当にこの世界から徐倫はいなくなったんだ"と、深い喪失感に包み込まれる。墓もなければ、誰かが徐倫の思い出話をすることもない。読者とエンポリオだけが全ての事情を知っている…。
でも、アイリンが婚約者と共に父親に会いに行く途中であり、生まれ変わった主要キャラは誰も刑務所に入っておらず、皆が幸福に生きていることを知って、徐倫たちの人生は決して無駄ではなかったと読者は知る。彼女らが頑張ったから、アイリンやアナキスの幸せがある。悲しみは少しずつ癒えていく。
徐倫が最後にエンポリオに言った「あんたを逃がすのはアナスイであり…エルメェスであり、あたしの父さん空条承太郎…生き延びるのよ、あんたは『希望』!」。エンポリオに託された『希望』は、� ��事に成就された。
※主要キャラが皆死んだ後に、これまで脇役として殆ど光を浴びなかった人物が敵ボスを倒すという展開にも度肝を抜かれた。前代未聞のクライマックスだ。
最後の『完』の見開きページにFFだけがいないことにも胸を打たれた。あれはFFの死に際の言葉「それはきっと別のFF。あたしじゃあないと思う」を反映したんだと思う。FFは記憶をなくして別人として生きるより「さよならをいうわたし」として別れを選んだ。誰もが同じ人生観を持たなくてもいい、幸福のあり方はそれぞれ違うという、荒木先生のメッセージと僕は受け取った。
ジャンプでの6部完結当時、「 徐倫や、あの承太郎が死ぬなんて!」と打ちひしがれ虚脱状態になったけど、主要キャラを殺すことで誰よりも一番辛かったのは、キャラクターを生み出した作者の荒木先生自身だろう。80巻まで15年以上も連載したキャラは自分の子供も同然。思い入れの深さを考えると、余程の覚悟がなければ彼らを殺せない。でも、荒木先生は愛するキャラたちを一度葬ってでも、「人間同士を引き付けあう『愛の強さ』(=引力)」を描きたかったんだと思う。たとえ肉体が滅んでも、魂に深く刻まれた愛の記憶が引力となり、生まれ変わって再会していく…稀に見る素晴らしいフィナーレだと思うッ!
今の社会は人間関係が希薄と言われ続けて久しい。その中で、読後に周囲の人をこんなにも愛しく感じさ� �るマンガと出合えた事が本当に嬉しい。この作品は、日々の生活で当たり前のように接している両親や兄弟、友人、恋人、同僚、そういった身近な人を心から愛したいと思わせてくれるだけでなく、朝、家を出てから帰宅するまでの全ての出会いに意味があると教えてくれる。出会うべくして出会っている、人と人の繋がりを大切にして欲しい、それを愛するキャラクターの命と引き替えにしてでも伝えてくれようとした荒木先生に、僕は心から感謝したい!
エンポリオと共に涙を流し終わった後は、力強く"生"をまっとうした登場人物の記憶と共に、本を閉じて歩き始めた。
P.S.ジョジョは4〜6部で"運命"と戦う人間が重点的に描かれている。吉良はバイツァ・ダストを発動し「決定された未来は変えられな い」と告げ、スコリッピも「石に刻まれた結果は変えられない」と言い、プッチ神父もメイド・イン・ヘブンで「一巡しても同じ運命になる」と語った。運命との向き合い方は様々だ。4部では早人をして「運命に"勝った"」と叫ばせた。5部ではブチャたちが『眠れる奴隷』から目覚めて「運命に至る過程」に意味を与えた。6部でプッチは運命は変えられないから先に知ることで克服するしかないとし、一方で徐倫たちは愛という絆で運命を変化させた。絆…徐倫のスタンド、ストーン・フリーは"糸"だ。別れと再会、人と人の絆を描いた6部の象徴となる主人公の能力(糸)だね!
P.S2 4部のラストでジョセフは「杜王町の若者は黄金の精神を持っており、その"精神"は吉良の事件を知らない他の人々の中にも自然としみわたって行く」とした。5部ではスコリッピがブチャチームの黄金の精神が「どこかの誰か(=読者)に希望として伝わって行くかもしれない」とし、この6部では宇宙一巡後の世界にまで黄金の精神が伝わり、アイリーンたちは幸せに生きている。街→読者→未来世界と、人間讃歌が伝わるスケールがどんどん大きくなっている。
P.S.3 ジャンプで最終回を読み、陽だまりのような暖かさと、一抹の寂しさに包まれてひとしきり涙した後、再びモーレツな感動に襲われたのは単行本発売時。カバーを外すと背イラストはアイリンだった!体に電気が走った。『ジョジョの奇妙な冒険』と印刷された文字とアイリン。それは、あたかも荒木先生が"アイリンになっても物語は続いているんだよ"と語りかけているようだった。そして、アイリンの顔をジッと見ていると、彼女が背イラストに登場するまでに散っていった仲間たち--ツェペリ、シーザー、アブドゥル、花京院、イギー、重ちー、鈴美さん、アーノルド、ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ、エルメェス、アナスイ、ウェザー、FFらの顔がダブッてきて、また視界が見えなくなった。
徐倫ではなくアイリン! 物語は繋がっている! | そこにいたのは… | 80巻表紙。これを外すと… |
【名場面50選・あとがき】
2004年12月から2006年5月まで、約1年半にわたって書き続けて来た名場面50選は以上でオシマイです。最後まで読んで頂いて有難うございました。作品があまりに偉大すぎて僕の文章力では、到底その魅力の全貌を伝えることは出来ませんが、ずっと語りたかったことはここに書ききりました。これまで第6部について「連載時に読んだだけ」「難解で途中で読むのやめた」という言葉を耳にする度に、歯がゆい思いで地団駄を踏んでいたので、少しでもこの50選が「6部スゴ過ぎ!」「6部やっべ!」という声に繋がればと願ってやみません(もちろん、ジョジョはどの部もサイコーというのが大前提デス)。
以前、荒木先生が仕事場で訪問インタビューを受ける番組がスカ� ��ーでありました。先生はちょうどその日、6部最終回を仕上ている所でした。「最近泣いたのはいつですか」と質問された荒木先生が「これを描いていて…」と言ってカメラが映したのが"僕の名前はエンポリオです"のページだったのです。この放送を見た僕は、作者が泣きながらペンを握って描きあげた作品を読めるなんて、ホント、ジョジョ・ファンは幸せ者だと
心底から思いました。(T_T)
この50選は、連載中の第7部スティール・ボール・ランを入れて約90巻あるうちのたったの50シーン。まだまだ良い場面はたくさんあります!ぜひ全巻揃えて、家宝として末代まで受け継いで下さいね〜ッ!
〔著作権について〕学問・研究目的の「引用」ということで、全ての画像に巻数を記してアップしています。具体的に各シーンの魅力を語る為に画像を「引用」しているのですが、50シーンともなると量も多く、著作権で許される「引用」の範疇かどうか心配しています。…とはいえ、3部までのシンプルな攻防戦に対し、物語が複雑になる4部後半あたりからは、画像の力を借りねば言葉の解説のみでは限界があるのも事実。とにかく最後にもう一度、作品の全ての著作権が荒木先生と集英社に� �ることをここに明記しておきます。(一定期間が過ぎれば大幅に画像を削除する方向で考えています)
★第6部ジョジョ立ちinケープ・カナベラル
(オマケ)ジョニィとジャイロ、男の友情 スティール・ボール・ラン第3巻
ジョジョ第7部!19世紀末、賞金60億円の北米大陸横断レースに出場しているジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョスター。ジョニィはかつてピストルで撃たれた後遺症で下半身が麻痺しているが、手綱を掴めば鞍まで自力で這い上がることは出来る。2人は一緒にゴールを目指していたがアリゾナ砂漠で何者かの襲撃を受けた。サボテンの針を顔面に浴びたジョニィは馬から転落する。後方から迫る敵影を見たジャイロは叫ぶ「ジョニィ・ジョースターッ!早く馬に乗れ!!」。2人の目的は戦闘ではなくゴール。戦いに時間を割くより馬を先に進めることが重要だ。だが、ジョニィは� ��目をサボテンでやられ出血していた「先に行けッ!目に血が入った!だが眼球は無事だ!」。
ジャイロはこれまで基本的に単独行動をしてきた男。そして超個人主義。ジョニィを馬上から見下ろしている。敵の馬はどんどん接近して来た。ジョニィが地面に這いつくばったまま叫ぶ「行けってッ!ゴールまでは一緒に行くと約束したが、お互いライバルでもあるぜ!この地帯は先に抜けろッ…レースはレースだ…オレを待つ必要はない…血をふいたらすぐに行くッ!」。
足の動けないジョニィは"後からすぐに追いつく"どころか敵に殺られるだろう。なのにジャイロに早く行けと言う。ジャイロの目の色が変わった。「わかった…お互いライバル同士だ!先に行ってるぜ!」「ああッ!行けーッ!」「ただし方角はあの野郎の方� ��がな!」ドッバアアン!ジャイロは後方に愛馬ヴァルキリーを駆けて行ったッ!ジャイロがジョニィの為に敵に突っ込んで行ったのだ!!(熱いぜSBRッ!!)
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