SNOW
監督:キム・ヨンファ
出演:ハ・ジョンウ、ソン・ドンイル、キム・ドンウク他
2009年 韓国映画
"韓国とスポーツ"
実在する韓国代表スキージャンプのチームをデフォルメして映画化した"国家代表!?" 韓国は日本よりオリンピックなどトップスポーツにかける予算が数倍あり、トップアスリート達は国家の為に世界で戦う国の名誉と象徴とされている。兵役の免除やマンションなどをオリンピックや世界的なスポーツの大会の優秀者に与えられる。スポーツに自信のある若者は、ナショナルチームに入り結果を残すということに対しての意識はすごく高いのである。この作品に登場する人物達は実在するのだが、おばあさんの世話をする為に兵役を逃れたい者や、アメリカに養子として行った子供が大人になり帰化してまで母を探す者など、ただスポーツに勝ちたいと言うより、人生を賭けてスポーツをしている若者達である。日本のアスリート達にハングリー精神が少なくなってきていると語る大人達はたくさんいる。もちろん彼達なり� ��頑張っていると思うが、人生を賭けてまでやっている人は少ないのかもしれない。戦後"強い日本"をアピールする1つの例としてスポーツが見られていた頃と違って、個々のメンタルが弱くなったかもしれないけれど、エンターテイメント的要素など、新たなモチベーションが若者の中に生まれてきていることもまた事実である。国の代表になるということは何か?僕も日本代表や日本代表を目指すアスリートと数多く接しているが、韓国などに比べて、国を背負う意識は低いかもしれない。トップアスリート達に、特にマイナースポーツのトップアスリートに一度見て欲しい作品である。
■銀色のシーズン
監督:羽住英一郎
出演:瑛太、田中麗奈、玉山鉄二 他
2007年 日本映画
"栄光と挫折と復活"
10代でモーグルの日本代表になった若者が、ケガとリハビリで3年かかり、治っても大会に出ずに遊んでいたのだが、友情や町の人達の思い、そして愛の力でもう一度大会に復活する姿を描いた"銀色のシーズン"。瑛太演じる主人公"銀"はスキー場しか無い町にとっては期待の星だった。ケガをしてからは皆腫れ物を触るみたいに銀と付き合う。その中で、何でも話せる仲間が、モーグルチームについていけずフリースキーに転向した北海道の男と、遊びの中からフリースキーを楽しむ関西人。スタイルだけを楽しみ"フリースキー"をしている3人の生き方は、先が見えていなかった。� �げてばかりの人生ではだめだと再び大会の世界に戻っていくのだが、復活はデビューより大変だと思う。怖さも越え、一度味わった頂点を忘れ逆戻りして一からやる精神的苦痛、周囲の変な期待…。ただがむしゃらにやっていた頃と違って、メンタルな部分での苦労は多いに違いない。その苦痛を乗り越える力とは何だろうか?その答えを、この作品は教えてくれる。壁は誰にでもあるのだろうが、それを越えない限り、次のステップには踏み出せない。一歩前に進む力は、必要になる時が必ず来る。その時、力をもらう為にも、友達や応援してくれる人は必要である。大きな期待はプレッシャーにも自分の力にもなる。どのように"他人の目"をコントロールできるかが、ポイントなのだろう。ファンや応援者の少ない人間は世界のトッ プにずっと定着していない。世界のトップを走り続ける人は、多くの希望や期待を背負っている。だからトップアスリートに賞賛が与えられるのかもしれない。モーグルという競技、フリースキーの魅力など、スキーの楽しさがたっぷり詰まった作品である。白馬を中心に撮影した作品なのだが、多くのモーグルスキーヤーやフリースキーヤーも参加した作品だと、撮影助手をやっていた吉田さんも言っていた。リアルなスキーの魅力と、前に進む勇気を与えてくれる1本である。
■スノーボーダー
監督:オリアス・バルコ
出演:ニコラ・デュヴォシェル、グレゴワール・コラン、ジュリエット・グドー 他
2003年 フランス映画
"コンペティターの光と影"
スノーボードコンペティターとして頂点に君臨してきた男と、その男に憧れていた青年、2人が恋する1人の少女、そしてこの2人の男を育ててきたスキー・スノーボードショップの店長が繰り広げる"愛と青春と犯罪"の物語である。
オープニングから空撮、並走、そしてライディングをしっかり見せる定点のフォローカメラ、さらにはステディカムを使って、きれいな雪山と気持ちの良いフリーライディングが描かれている。
フリーライディングと大会、カルチャーとコンペティション。どちらにも魅力はあるが青年� �"勝つためだけのスノーボード"に魅せられてしまう。"大事なのはトロフィーじゃない""競技より山が好きだ"というスノーボード本来の楽しみを伝え人格を作ってほしい店長と、孤独の中、ただ戦うことでスノーボードと共に生きるカリスマライダー。しかし、コンペティターはいつか衰えていく。替え玉として青年を出し、その間ビックゲームの売り上げを盗もうとするスピーディーな展開は、ストーリーの面白さを感じさせる。
実際ヨーロッパ最大級のスノーボードイベント"NOKIA AIR&STYLE"の会場で、2003年当時のトップライダーを使って撮影しているので、パークライドもフリーライディングも本物を楽しめる。
フランス映画的独特な間と静けさで"静"と"動"が入れ替わっていき、ライディングにも恋の行方にも犯罪ものとしての展開にもドキドキしながら見ることができる。枕の綿から雪に変わったりと、シーンのつなぎがビジュアル的で気持ちよい。
スポーツの王者になると、孤独とおごりと不安がうずまくことも多いのであろうが、そんな心理描写が伝わってくる。特に大会で頂点を目指したい人に一度見てもらいたい作品である。
■エバー・フリーダム〜白銀の絆〜(Stolen Good)
監督:ラス・ジェイカス/ナターシャ・サリス
出演:ジェイソン・ウォーダル、ラス・ジェイカス、カーク・ワーナー 他
2002年 アメリカドラマ
"ラス・ジェイカスの想いとスノーボードライフ"
"エバー・フリーダム"は3人の若者スノーボーダーの話である。
監督・製作・脚本・撮影・出演をラス・ジェイカスという1人の人間がやっている。
ストーリーはいたってシンプル。3人の幼馴染がいて、1人はスポンサーもついたプロスノーボーダー。1人は大学に通っているが、ボードはプロ級で学校を休みビデオを作ろうとする。もう1人もボードは上手いが、自由にやりたいと車泥棒で生活をしている。そんな3人が恋に落ちたり、友情を確かめたりする青春ストーリーである。まず、監督でもあり出演も� ��ているラス・ジェイカスが本当にスノーボードが好きで、映画そのもののライフスタイルの人なんだろうなぁと作品を見て感じられる。ライディングシーンはすごく多い。フリーライディング、ハーフパイプ、パークライディング…とフィルムで美しく撮られたライディングが数多く見られる。さらに、生活のシーンはサーフィンやスケートボード、そして車のカスタムとX系好きな人の生活そのものが描かれている。ただ、ストーリーは直接的過ぎて、これならドキュメンタリーで撮っても良かったのでは?と思うが、メンバーの1人が死んだり、その父の会話などはやはりストーリーものではないと撮れないし、これがあることによって一般の人が見やすい作品になったのかもしれない。日本でもドラマとかでこんな作品があったら、ス ノーボードは広まるかもしれない…と思わされる1本です。
■Solitary Island
出演:中井孝治、國母和宏、鈴木翔太、原田将臣 他
制作:Seven Samurai Entertainment
"侍たちの真の姿を見よ"
トリノのオリンピック選手である中井孝治、國母和宏がハーフパイプでなく、
地元北海道の山を中心にフリーライドしている映像や、彼らの仲間である
"真七人侍"を撮影した"Solitary Island"
オリンピック選手や仲間達の"生"の表情が見られる1本である。
クルーとして動いている彼らは、仲間であり、ライバルであり、アツイライディングを
決め合い、盛り上がっていく。
この作品は、映像も良いが、音楽が特に気持ち良い。最近はHIPHOPだけとか
ロックだけとか、ジャンルやアーチストコラボに偏って、ライディングとミスマッチな
ものが多いが、この作品では、ライダーのキャラクターと音楽がマッチしている。
映画的選曲で、ライディングだけでなく表情や人間にも目がいくように、音楽が
導いてくれる。
札幌在住の仲間達で真のボードジャンキー達"侍"が作り出したジャパンライダー
だけのDVD作品。
日本人ライダーのスタイリッシュなライディングが納められた気持ちの� �いDVDで
ある。
■Reflections
出演:楠泰輔、川口徹、遠藤淳平、浦田義哉、太野垣達也 他
Champion Visions/Mighty Jamming Production
"HOTで止まらないフリースキーDVD"
この作品を見た瞬間、何だかわからない不思議な気持ちにさせられた。
それがなぜか、答えは自分の中ですぐにわかった。ノンストップでレゲエMIXの音楽に雪上のカットが続いているからだ。レゲエ=夏とかサーフィンというイメージを植えつけられている僕にとって、この感覚は今まで味わったことの無いものだった。5分もすると慣れてきて、10分もするとすっかりはまってしまった。フリーライディングなんだから表現もフリーだし、ライディングがHOTに見えるし、パウダーが海的なゆったりさを感じ、暖かい室内でのんびりと楽しく見ることができている自分に気づいてしまった。
パウダー、ジブ、エアー、街中…と様々な場所での、それぞれのスタイルでのライディングシ� ��ンはオリジナリティも高く、とても楽しめる。
2009年カナダモントリオールで行われたフリースキーの映像コンテスト"IF3"で、ファイナルトップ7に選ばれた映像だけあって、映像そのものも実にスタイリッシュな作品である。ただのDVDとは違う"作品"である。YouTubeなどで手軽に見られる映像と違い、この作品は大きなモニターで見たい1本である。出来ればスクリーンで皆で見たら、気持ちもあがるのではないだろうか?
■bd SNOWBOARD RULERZ
監督:小林充明 スノーボード撮影:澁谷祐仁、MAYUMI
出演:中井孝治、國母和宏、村上大輔、村上史行、JT、笠原啓二郎、吉野満彦、安藤輝彦、ライオ田原 他
配給:ポニーキャニオン 2006年9月30日〜渋谷アミューズCQNにてレイトロードショー
"日本の今のスノーボードシーンを知りたい人に"
日本でもついにスノーボードのドキュメンタリー映画が作られた。出演者は今元気のいいライダー達、中井孝治、國母和宏というトリノオリンピックやワールドカップなどコンペティションで世界と戦うライダー、ライオ田原などX-Trailなどのショースタイルのコンテストで世界と争う男達。
今の日本のトップクラスの大会での真剣勝負や友情をうまく切り取っている。
僕も若い頃、よく雪山でフィルミング� �した。戸田友康とグランドトリックツアー、山崎勇亀とワンメイクスポット、マサ竹内などのSNOW BEATというプロジェクトもやったし、マイケル・チャックや金田由貴子とかと山篭りとか、Salomonのコマーシャルをやったりとか…。
スノーボードのフィルミングやサーフ、もちろんBMXなどもそうだが、ライダーとの距離感が非常に重要である。
山の天気は変わりやすいし、その雪山の状態はその一瞬しかないのだから。
もちろん撮影しながらライダーのテンションを上げていく時もあるし、最後の1本と言って撮っていてもどちらかが納得しなければ数十本その後撮る事もある。
大会などはヘッドホンを耳にさされたりするので、仲良くなって信頼がなければ真の姿など見せてくれない。
この作品はライダーとフィルマーの距離が非常に近い。友達であり、撮影対象であるライダーとカメラの距離の近さはスクリーンを通し ても伝わってくる。
だからこそ、いろいろな表情が見える。TOYOTA CUPやX-Trail Jamなど時々テレビでスノーボードを扱っているが、その時の表情とは違う。
無邪気で、真剣で、不安で… でもライディングによって自分を表現するライダーの真の姿を映し出している。
今、旬な日本のスノーボーダーの素を見たいなら、是非見るべきであろう。
bdはきっと彼らの通過点に過ぎないのではないか?そしてまた新しい日本のスノーボードシーンを作ってくれるに違いない。
■ファースト・ディセント
監督:ケンプ・カーリー、ケヴィン・ハリソン 撮影:スコット・ダンカン
出演:ショーン・ホワイト、ハンナ・テーター、テリエ・ハーコンセン、ショーン・ファーマー、ニック・ペラタ、トラビス・ライス
配給:東北新社 2006年12月23日〜渋谷シネ・アミューズにてロードショー
"トップライダー達の真実のライディング"
どの世界にもクラッシックスと後に呼ばれる名作がある。例えばサーフィンなら"エンドレス・サマー"、スケートボードなら"ドッグタウン&Gボーイズ"、そしてこの"ファースト・ディセント"はいつの日かスノーボード界のクラッシックスとなる作品に違いない。
トリノオリンピックの男女金メダルコンビである"ショーン・ホワイト"� �"ハンナ・テーター"。そして、キング・オブ・スノーボーダー"テリエ・ハーコンセン"。
ウェットスーツにスノーサーフィンの先駆者達の映像も見ることができる。今思うと少々笑ってしまう、ウェットスーツでゲレンデの映像。僕も何度か雑誌に載っていたその写真と分かりにくい映像の記事を読んで、かつてウェットでゲレンデに行った。当時はスキーヤー達がやけにカラフルな蛍光色のピタピタのスキーウェアだった時代で、もちろんスノーボードなど無く、ゲレンデのレストランで変な目で見られたことを覚えている。
もちろんオールドスクールな映像も見ものなのだが、アラスカでのフリーライドがこのストーリーというか、ドキュメントの中心である。上記にも書いたショーン、ハンナ、テリエと、ショーン・フ� �ーマー、そしてアラスカのニック・ペラタの5人が前人未踏の斜面にトライしていく様子だ。
新旧3世代の伝説のライダー達、しかもショーンやハンナはハーフパイプやワンメイク、パークなどの作られたコースでのライディングしかほとんど見たことがなかったので、案の定転んでいるカットが初めは続いていた。
トリノのチャンピオンも自分のフィールドの外ではメタメタにやられている。でも何度も立ち上がり、またドロップインしていく。スピード・スリル、そして、誰もやったことのないこと"究極"まさにエクストリームだ。
初滑走、ファースト・ディセントで彼らが残した足跡は、ただライディングしたというだけでなく、エクストリーム、そしてスノーボードの大きな道である。
スノーボードのクラッシック� �になる、この"ファースト・ディセント"を見ないと、今後のスノーボードを語ることができないと言っても過言ではない。
■エックス(EX)
監督:クリスチャン・デュゲイ
出演:デヴォン・サワ、ブリジット・ウィルソン、ルーファス・シーウェル、ヘイノ・ファーチ、ルパート・グレイブス 他
配給:日本ヘラルド映画 2002年 アメリカ映画
"エリートとストリート"
この作品"エックス"をSNOWのカテゴリーのしてみたが、それ以外にも、このタイトルの通り、色々なエクストリームスポーツが登場する。オープニングは、いきなりMTBから始まり、スケートボード、フリースタイルスキー、カヌー、スノーボードなど様々なカテゴリーが入っている。しかも、ライダーのビデオ的な扱いでなく、しっかりストーリーに活かされているところが良い。
ストーリーは、オリンピックの金メダリストのスキーヤーとパンクバンドやスケートをしているストリートにどっぷりつかったスノーボーダーがCM撮影ということで、一緒にオーストラリアの山に入るところから始まる。ストリートの2人が屋根の上からドロップインしたり、電車にひもをつなぎウエイクボ� ��ドのようにスノーボードで遊んでいる姿を、エリートスキーヤーはさげすんで見ている。しかし、実際に山に入ってみると、その2人のほうがはるかに自分よりうまいことを思い知らされる。トレーニングと大会しか知らない彼女と、自然の中で究極(エクストリーム)を楽しみながら滑る人間の差が描かれている。
もともと、ストリートや自然の中で楽しむということと、体育会的発想でやらされていることには差がある。タイムを競うのと、自分のスタイルを求めることでは、同じことをやっても大きな差が出てくる。やはり、エクストリームは楽しみながら自分を表現するものだと再認識させられる映画である。
さらに、国際的犯罪者をたまたまビデオで撮ってしまったことで、究極具合は加速する。雪崩の中でのライディン グ、そしてクリフでのラン。ストーリーの中で展開していくので、より楽しむことができる。
ドキュメントも面白いが、エンターテイメントの中でエクストリームが生きているこの作品は、エクストリームの未来を感じさせてくれる。そして、スタイルを追求するこのスポーツが、正しいことなのだという確信も与えてもらえる。より多くの人に、エクストリームの面白さを伝える最大の表現方法がぎっしり詰まっている。
僕が映画を撮る上で本当に参考になる作品です。是非、ライダーの人達にこの作品を見てもらって、自分達のやっていることに自信を持ってもらいたい。エリートより、ストリートが正しいと伝えてくれるこの"エックス"は、エクストリーマー達に勇気を与えてくれる作品である。
■クールボーダー(OUT COLD)
監督:ブレンダン・マロイ、エメット・マロイ
出演:ジェイソン・ロンドン、リー・メジャース、A・J・クック、ライオ田原 他
アメリカ映画
"誰でも楽しめるスノーボードエンターテイメント"
この作品"クールボーダー"はスノーボードを知らなくても楽しめるし、知っているなら有名ボーダーも多数参加しているので更に楽しめる。一言で言うと、下ネタたっぷりのスノーボードコメディである。白熊にフェラチオされたり、ジェットバスの吸入口に大切なところを入れて抜けなくなったり、雪山のゴンドラになぜか水着ダンサーがいて脱いでしまったり…。ともかくエロ笑いたっぷりである。
ストーリーは、自分達のゲレンデがリゾート王に買われそうになりながらも守っていこうとする中で繰� �広げられる友情とラブストーリーである。
見どころは、まずカットラインと画が美しいということ。監督はマロイ兄弟。"ブリンク18"や"Foo Fighters"のPVで有名なディレクター。マロイ兄弟はスノーボードはもちろん、スケートボードやサーフィンもよく撮っている監督。まさに僕が好きなタイプの監督。
2つ目は、トップライダーがいっぱい出ていること。主役リックの吹き替えライダーとしてジェイソン・ロンドン。メインのルークの吹き替えにカナダの大スター、スケーター兼ボーダーのロブ"スラゴー"ボイス。その他にもジェイソン・ボーズ、ダラダ・キダスなどが参加している。しかも、吹き替えでなく役として2人の有名ボーダーが参加している。ヒロインの婚約者として、X-GAMESのハーフパイプやスーパーパイプの優勝でも有名なスピンマスター"トッド・リチャーズ"。そしてメインメンバーの友人役である日本一有名なスノーボーダー"ライオ田原"が出演し� ��いる。ライオは、ベンチで繰り広げられるスノーボード誕生ウソトークや、キングオブマウンテンを決めるシークレットセクションのおいしいところで出てくる。"bd"でも役をやっていたが、こちらの方が数倍しっかりしている。
そして最も楽しめるのは、いろいろな面白いライディングシーンが入っていること。例えば、ジョッキにビールを入れこぼさないようにライディングしていくシーン。このシーンの中では、パウダー、レインボー、エアーなどもガンガンやっているし、グラブも決めてスタイリッシュだ。もちろん、パウダー、屋根からのエアー、ツリーラン、何でもあり。ライオの片足ビンディングを外し、ワンフットでエアーしてくるところなども面白いぞ。とにかく誰もが楽しめる、まさにエンターテイメントだ!< /p>
SURF
監督:ショーン・マクナマラ
出演:アンナソフィア・ロブ、デニス・クエイド、ヘレン・ハント他
2011年 アメリカ映画
"夢を止めない方法"
片腕の人気女性プロサーファー"ベサニー・ハミルトン"の実話を元に制作された"Soul Surfer" 彼女のドキュメンタリーというか、サーフドキュメントを何度も見たことがある。独特なライディングと、満面の笑顔。サメに片腕を食いちぎられ、その後、大会に勝ち、プロサーファーになったことは以前から知っていた。きっと大変だったんだろうなぁ…とは思っていたが、この作品で当時の彼女や家族、仲間の気持ちを知ることが出来て、よりベサニーのことが好きになった。子供の頃から優秀なサーファーで"リップカール"との契約が決まる。この契約は、サッカーで"adidas"や"Nike"との契約するくらい凄いことである。サーフィンでは"リップカール""Red Bull""OAKLEY"などのメーカーと契約することは、世界につながる第1歩なのだ。そんな"夢"が少し見え、練習している時、サメに片腕を奪われる。サーフィンはバランススポーツ。片方の腕が無いとバランスは崩すし、両腕でパドル出来ないし、波をくぐって沖に出るのも、ボードを両手でしっかり持てないので困難である。片腕を失ってサーフィンを続ける彼女に興味本位で集まってくるマスコミ。今まで簡単だったことも出来なくなってしまい、不安も大きくなる。なぜ自分だけ、こんなに苦しまなくてはいけないんだろう?少女の不安は最高峰に…。友達、家族そして経験の中で彼女は心がどんどん強くなり、"サーフィンを楽しむ"ことを体で感じていく。この作品を見て、彼女のドキュメンタリー作品やサーフクリップを見る� �"あの笑顔"の価値がより大きくなっていくだろう。夢を止めることは簡単だが、人生は止められない。人生を進める為には夢を持たなくてはならない。今壁にぶつかっている人は、この作品から勇気をもらって下さい。
■あの夏、いちばん静かな海。
監督:北野武
出演:真木蔵人、大島弘子、河原さぶ他
1991年 日本映画
"波の音は聞こえなくても…"
北野武監督、真木蔵人主演のサーフィン映画"あの夏、いちばん静かな海。"1991年、湘南でごみ収集で働く1人の耳の聞こえない青年。仕事中に見つけた捨てられていた1本の折れたサーフボードとの出会いが彼の人生を変える。自分で板を直し、海に出る。サーフィンという自分の楽しみや目標が生まれたことで、色々な人と出会い、生活が広がっていく。彼女も耳が聞こえない障害を持っているカップル。いつも2人だけだった空間が、地元のサーファーなどと一緒にいる時間が増えていく。2人の目線(聴線?)で描かれている時は、周りの自然音が無く、久石譲の音楽だ� ��が聞こえてくる。台詞も少ないので、画面をしっかり見ていないとストーリーが分からなくなる。主人公の2人が台詞1つ無いので、表情を見ていないと気持ちも伝わってこない。僕的には、説明台詞と派手なCGで見せられるものよりも、はるかに映画的だと思う。90年代前半のサーフシーンが思い返せるのも楽しい。あの頃の大会の様子や派手なウエット、当時のプロサーファーもいっぱい出てくるので、ある世代から上は懐かしさも加えられて楽しめる作品です。さらに、真木蔵人が今やサーファーとしても有名になっているように、吹替えも無いので、リアルに感じ、違和感なく見ることが出来ます。僕も障害者がスポーツ教室に参加してきた時、少しとまどったことがあります。しかし、一緒にやっていると、言葉が少なくても"1つ� ��スポーツ"が共通点となり、楽しく時間が過ごせることを知りました。もちろん、教えること1つとっても大変なこともありますが、それを超えた時の楽しさは何倍にもなります。"障害者とスポーツ"そんな課題を考える為にも見て欲しい作品です。
■バッシュメント
監督:布川敏和
出演:土屋アンナ、要潤、中山エミリ他
2005年 日本映画
"すれ違いと兄妹の絆"
あのシブがき隊のフッ君こと布川敏和がメガホンをとり、横浜を舞台にサーファーの土屋アンナが演じる妹と要潤演じる兄の悲しい過去をひきづる2人の青春グラフィティ"バッシュメント" 2人をつないでいるのは血と幼い頃サーフィンでドロップした妹を助けに行った兄の姿。子供のくせに兄は、サーフィンは自分に勝ち、勇気を持ってBIG WAVEにトライすることを教えていた。妹は人生をサーフィンと同じよう、いつか来るBIG WAVEの為、強く生きている。設定や考え方としてサーフィンは使われているが、全体としてはギャングアクション映画である。僕はストーリーの中にX系スポーツが道具のように使われることが好きである。サーフィン映画といってライディングだけを見せるのではなく、作り物かもしれないがライフスタイルを提案していることは素晴らしいと思う。特にX系スポーツは大会だけでなくライフスタイルやカルチャーを見せるスポーツでもある。ワクワク感やドキドキ感を与えたり、カルチャーとして格好よいものでなくては、ここまで広がらなかったと思う。ライディングはその人の性格や生き様を映す鏡である。だからこそ自分の生き方に誇りを持ち、信念のあるライダーが強いのである。この作品は、すれ違いがあり、引き離された兄妹� ��サーファーを描いている。家族がいなくてもサーフィン仲間と共に強く楽しく生きようという妹の姿が、彼女のライディングそのものなのだ。残念なのはそのライディングスタイルが表現できてなかったことなのだが…面白くあっという間に見られる作品でした。
■ONE CALIFORNIA DAY
監督:マーク・ジェレミアス、ジェイソン・バッファ
出演:ジョエル・チューダー、クリス・マロイ、アレックス・ノスト、ジョー・カレン、タイラー・ウォレン 他
2007年 アメリカ映画
"サーフィンの伝統と未来"
数人のカリフォルニアのサーファーやシェイパー達の生活とサーフィンへの考え方をショートフィルムにし、それをまとめた作品"ONE CALIFORNIA DAY"
コンペティションのサーフスターでなく、生活の中にサーフィンを取り入れている伝説のサーファー達を取り上げているところが、他のサーフムービーと大きく違うところだ。サーフィンの"魂"を伝えようとしているところなど、現代の"エンドレスサマー"だ。波を分かち合う精神や先人達のサーフの考え方など、サーフィンの魂を記録しているドキュメンタリーである。様々なカリフォルニアの朝を早回ししているシーンから作品はスタートする。プロだけが道でなく、精神をサーフィンに求めるサンディエゴのジョエル・チューダー。ロング、ショートだけでなくスタンダップパドルまでこなし、波との一体化を求めている。ホットロッドとサーフィンを愛するサウスベイのタイラーは、サーフの歴史を常に尊重している� �シークレットスポットやサーフトリップで自分達の聖地を追い求めるカウボーイのクリス・マロイ。オレンジカウンティで独自のスタイルを追求するアレックス・ノストやタイラー・ウォレン。それぞれサーフィンとの関わり方は違うが、生活の一部として取り入れている。サーフィンは生き方であり、人生を学ぶ場所なのだ。特に面白かったのは、サーフィンの大会王者トム・カレンの弟"ジョー・カレン"をフューチャーしていること。普通ならトム・カレンをフューチャーするのだろうが、その近くでサーフィンを愛し、生きている男を取り上げることは、サーフィンを勝負の場では無いとする制作者側の強い意志が伺える。波と一体化する楽しさや気持ち良さは多くの偉大な先輩達に支えられている。その大切さを思い出すきっか けを作ってくれる心に響くサーフムービーである。
T - Painの歌詞で"あなたが飲んで買う"
■Life 天国で君に逢えたら
監督:新城毅彦
出演:大沢たかお、伊東美咲、真矢みき 他
2007年 日本映画
"ウインドサーファーの生き様"
病気で短命だったが、ウインドサーファーなら誰もが知っている飯島夏樹の人生を描いた"Life 天国で君に逢えたら"。世界のすべてのプロスポーツ選手で最も多くのワールドタイトルを持っているのは、ビヨン・ダンカーベックというウインドサーファーである。ビヨンが来日した時、インタビューも含め、色々と話す機会があった。ビヨンはとにかくすごい筋肉でパーフェクトボディを持つ40歳だった。風・波・自分の肉体と、様々な力でスピードやトリックを競うスポーツなので、心技体、すべてが必要である。彼にチャンピオンの条件を聞いたところ、"ウインドサーフィンを楽しみ、大会を好きになり、家族を愛すること。このバランスを常に保つこと"と言っていた。この作品"Life 天国で君に逢えたら"は、ビヨンが言っていたチャンピオンの条件をすべて持っている。世界中の海を周り、ウインドサーフィンを愛し、大会のため練習を続け、妻と4人の子供を大切にし、人生をまっとうした。ガンを宣告された時、すべてを嫌い、バランスも崩れたが、自分の人生を綴ることで、再び"最期の人生"を楽しんで生きることが出来た。この生き方はウインドサーファーだけでなく、多くの人に生きる勇気を与えた。"スポーツ人は常に尊敬されたり、人に勇気や夢を与える人であってほしい"これは僕が本当のトップ選手に常に望んでいることである。もちろん、スランプもあるし、病気やけが、引退などもあるだろうと思うが、極限を求め挑戦し続ける姿を見せる職業のさだめだと思う。この作品は冒頭のシーンやサー フシーンが本当にリアルで、しかもこのアングルで見られるなんて…というカットがたくさんある。飯島選手のストーリーを映画化するということで、ウインドサーフィン界全体がこの作品を支えている。岩崎真を始め脇元、釜口などのウインドサーファー、海外ライダーも多数出演。マニューバラインを始めメーカーも協力。亡くなった後、こんな形で、また、ウインドサーフィンの頂点に立った飯島選手。多くの人に愛され、多くの風や波と一体化し、多くのタイトルを掴んだ男。ウインドサーファーという生き方を教えてくれる1本です。
■イン・ゴッズ・ハンズ
監督:ザルマン・キング
出演:マット・ジョージ、シェーン・ドリアン、マシュー・スティーヴン・リュー 他
1997年 アメリカ映画
"サーフトリップの真髄"
コンペティターという大会で名を挙げる人と、自分のスタイルを追求しライディングするサーフトリップを主としている人達。サーフィンのトップの世界は大きく分けるとこの2つに分けられるが、この作品"イン・ゴッズ・ハンズ"はサーフトリップする男達をストーリー化し、創り上げられた作品である。「波はどこからやってくるのか?」「完璧な波はいつどこに来るのか?」サーフトリップの真髄とも言えるテーマの中、世界中を巡る世代の違う3人のサーファー達。ジェットスキーでビックウェイブに乗ることは� �リアル"か"リアルでない"かなど"波とサーフ"という考え方、スタイルの問題提起や、サーフトリップしている人達も練習をし、その頂点として自分のスタイルを打ち出すライディングを目指している様子などを描いている。大会に出ている人がアスリート、サーフトリップの人はカルチャーと分けがちであるが、両者共に、両方を持っていることを描いた"サーフマインド"が伝わってくる。恋があったり、大きな美しい波のライディング、船の上に作ったランプでのスケートシーン、トラブルに巻き込まれてのアクション…と色々なストーリーが次から次へと押し寄せてくるスピード感あふれる作品である。サーフトリップしている人は"自分自身"との戦いをしている感じが手に取るように分かる1本。サーフトリップに興味が� �る人には是非見てもらいたい作品です。
■エンドレス・サマー
監督:ブルース・ブラウン
出演:マイク・ハンソン、ロバート・オーガスト
1964年 アメリカ映画
"僕の今を作ってくれた映画"
僕が初めて見たエクストリームムービーが"エンドレス・サマー"だった。オレンジ色がスクリーンいっぱいに広がり、サーフィンというものを初めて見た。2人の若者が"終わらない夏"を求め、南半球をサーフトリップするというものだった。それまで映画はストーリーものしか見たことが無かった僕にとって、この筋書きの無いストーリーは新鮮だった。しかも、音楽と1人のナレーションで全編進んでいく。ナレーターはこの作品の監督"ブルース・ブラウン"。カメラ・ナレーション・監督を1人でやっていることにも驚いた。僕がスポーツを撮 るスタイルは、この"ファーストインパクト"から始まったと言っても過言では無い。ブルース・ブラウンの息子デイナ・ブラウンも映画監督で、"STEP INTO LIQUID"などのサーフ映画や"Dust To Groly"というダートレースの映画を撮っている。以前デイナに会った時、"映画だけでなくシーンを作る人"というイメージを受けた。僕の人生に大きな影響を与えたことは間違いない。
ブルースのウィットに富んだ少し"小バカ"にしたナレーションは楽しくサーフカルチャーの魅力を僕に与えてくれた。そして今、僕はサーフィンやエクストリームスポーツを撮り続けている。映画という形にすることで、世界中の多くの人に魅力やカルチャーを与えることが出来る。そう言い切れるのは、この映画"エンドレス・サマー"で僕の人生が変わったから。断言しても良いだろう。
"Xtreme Movie"は言葉が通じなくても、カルチャーが発信できることなのである。久しぶりに"エンドレス・サマー"を見て、初心に戻れたような気がした。
■ローカルボーイズ
監督:ロン・モラー
出演:エリック・クリスチャン・オルセン、マーク・ハーモン 他
2002年 アメリカ映画
"ニューシネマパラダイスのようなサーフムービー"
幼い弟とその兄。兄の3人の友人。カリフォルニアのサーフシーンから始まり、美しいサーフカットの後は別のローカルの連中が出てきてサーフボードを盗み、女の子が登場。ひょっとしてお約束のサーフ青春ものか?と、ちょっと興味が無くなりかけた時、おじいさんの伝説のサーファーが登場。父を事件で亡くして以来、幼い弟は何か追い詰められるとパニックになる病気を抱えてしまう。兄は父の代わりになろうと弟を怒り、母を守るために必死だ。伝説の初老サーファーに憧れた弟は、彼に本当のサーフィンを学� �、友達になっていく。サーフボードをもらい、毎日彼のもとに通い、本当のサーフィンにはまっていく感じは"ニューシネマパラダイス"の映写室を思い起こさせる。おじいさんは普段車の修理屋をやっているのだが、少年はそこに通いつめ、修理を手伝ったり、サーフィンのことを教えてもらう。一生友達だと約束したのに、おじいさんは海にも顔を出さなくなった。少年は嫌われてしまったのでは…とまたパニックになる。勇気をふりしぼりガレージに顔を出す。おじいさんは妻と娘を交通事故で亡くした話を少年にする。
少年とおじいさんがサーフィンを通じて仲良くなっていくこの姿は"スポーツ""サーフィン"の魅力の1つであろう。同じものを愛する者同士だから、世代を超えた友情が生まれ、先人に対して尊敬の念を抱 く。僕も世代の離れたライダー達と一緒に撮影をしていると、こんな気分になれる時が時々ある。ニューシネマパラダイスのような温かい気持ちにさせてくれるサーフムービーです。
■ブルークラッシュ
監督:ジョン・ストックウェル
出演:ケイト・ボスワース、ミシェル・ロドリゲス、サノー・レイク 他
2002年 アメリカ映画
"家族・友情をつなぐパイプライン"
女子の1人の天才サーファーをベースにハワイのサーフシーンを取り上げたガールズサーフ映画である。若い頃、パイプに飲まれリーフで大怪我をしてパイプに対する恐怖心を持ってしまった天才女子サーファー。母親が家を出て行ってしまい、ホテルのスタッフとなり、妹を1人で育てている。そんな彼女をサーファー友達が支えている。ビックゲームでプロになり、賞金を稼ぐことを考えているが、恐怖心に打ち勝たないと勝つことができない。NFLの1人の男と出会い、恐怖に打ち勝つ心を与えてくれる。
この映画� ��サーフカルチャーをしっかり表現している。ローカルの気持ち、スケーター的ナイトライフ、サーファーマインドなどをきっちり描いている。バッファロースタイルという楽しくタンデムで乗るスタイルから、大会のコンペティションサーフシーンまで、サーフィンの全てをシーンに散りばめている。さらに"リアル"に見えるのは女子のトップライダーがスタントサーフィンをしていたり、出演していることだ。サーフスタントとしては、2000年のワールドチャンピオンシップ3位の"ロシェール・バラード"、2シーズンワールドタイトルで優勝の"メーガン・アブボ"、ASPのトップサーファー"ケイト・スカラット"、2002年のビラボンプロで優勝した"ケアラ・ケネリー"。トップサーファーがリアルを作り出している。
サーフィ� �の素晴らしさは、すごい技や勇気のあるトライをすると、誰もが応援し、誰もが賞賛することだ。同じことをやっている人間に対してのリスペクトは他のスポーツに比べて大きい。家族・友情がその強さを作り、賞賛を受けることが出来る。"ブルークラッシュ"はそんなサーフィンの魅力を、美しい映像と共にリアルに伝えるサーフムービーである。
■BIG WEDNESDAY
監督:ジョン・ミリアス
出演:ジャン・マイケル・ヴィンセント、ウィリアム・カット、ゲイリー・ビジー 他
1978年 アメリカ映画
"サーフムービー 色あせない名作"
僕は10代の終わりにこの映画に衝撃を受けた。サーフィンをやっている先輩がいつも"エンドレス・サマー"と"ビッグ・ウェンズデー"という映画のタイトルを口にしていた。見ないと話についていけないと思ってこの2本を見た。久々に"ビッグ・ウェンズデー"をDVDで借りてきて見た。リマスターしてあって映像がきれいだったせいかもしれないが、すごく鮮やかにあの頃に自分がトリップしているのが分かった。カリフォルニアの海が美しく撮られ、ロングに乗って板の上でステップするあのスタイル、角ばった"BIG WEDNESDAY"のあの文字。"ジェリー・ロペス"のライディング映像を見たのも、このBIG WEDNESDAYだった。ジェリー・ロペスだけでなくピーター・ハピルトン、ジャッキーなどその当時のライディングも楽しめる。チューブの中のカメラ、空撮のライディングショット。僕がサーフィンの大会の映像を撮りに行く時、潜在意識の中でついついイメージしているものが、この作品の映像だ。この映画を見て、サーファーははじけて楽しいものだと思わされた。イケイケ乗りでビートルのオープンに板を突っ込んで、女の子と騒いで、バカやりまくって、喧嘩して、でも友情は絶対的に大切な若者の楽しくて格好良い遊びのスタイルが、そこにはあった。軍隊に入って友達を死で失うこと。大人になって離れ離れになること。でも海を愛する友達だからこそ、また、大きな波があれば戻ってくること。ただサーフィンが面白いだけのス� ��ーツでなく、ライフスタイルに対する憧れを持たせてくれたのがこの作品だ。いつかこんな作品を撮りたいと思い、XSportsにとりつかれていった。僕にとってはXtreme Movieの原点的作品である。久々に見て、色あせない名作だと思った。この作品に出会えて僕は良かったと思っている。
■ブルー・ブルー・ブルー
監督:ダン・キャッスル
出演:ラクラン・ブキャナン、ハビエル・サミュエル、レシャード・ストリック 他
2008年 オーストラリア映画
"サーフィンがつむぐ兄弟愛、家族愛"
オーストラリアはサーフィンが文化であると感じさせる1本であった。サーフィンの大会で優勝し兄を超え町を出たいと思っている17歳の若者と、友人、兄弟そして家族の物語が、青い空と海の美しい映像と共に描かれている作品"ブルー・ブルー・ブルー"
サーフライドの映像の美しさだけでなく、表情やパドリングの時の様子までが丁寧に美しくフィルミングされているので、よりストーリーと神秘的な感情まで伝えてくれる。
甘酸っぱい青春ストーリーと兄弟・家族愛を描いているが、� �ーフィンがしっかりと生活の中に入っている。サーフスタントは"Parth Standlick""Marc Adam""Mitch Resevsky""Jesse Adam" 海の怖さ、夜の海と光、映像美だけでなく心の動きがアップとルーズカットと水中(映像)で上手く表現されている。
特にこの映画は兄や姉の影響でサーフィンやスケートなどを始めた弟達に見てほしい。弟は兄の姿を見て、そのスポーツに憧れたり、興味を持ちやがて夢を抱くようになる。弟が上手くなっていくと兄はやがてアドバイザーになったり、注意をするようになる。それは邪魔しているわけではなく、弟を大切に思っているからだ。いつも一緒にいると兄弟や家族の愛情が見えなくなる時がある。この作品は、そんな人達に、語らない愛情の強さを再確認させてくれる。兄弟で同じスポーツをしている人達に是非見てもらいたいサーフムービーである。
■AIR&STYLE
出演:ケリー・スレーター、タジ・バロウ、ミック・ファニング 他
発売・販売:マリン企画
"世界の注目サーファーが一気に見られる入門篇"
2008-2009年のWCTサーファー達のフリーサーフが納められた1本。
ケリー・スレーターは自らシェイプしたミニボードでライディングしていたり、ミック・ファニングはバレル、リップ、エアーと色々なスタイルのライディング、ボビー・マルティネスは1本波のロングライド、タジ・バロウは切れのいいサーフが入っている。
10人以上のトップ海外サーファー達のライディングを、特典映像ではミラーバージョンと呼ばれる鏡に映した逆向き映像で見ることも出来る。チェックしたいライディングのスタンスが逆な時、このモードで見れば自分のスタ� ��スに合わせてイメージトレーニングが出来るというニクイ演出をしてくれているのである。サーフィンを始めたばかりの人には特におすすめの1本!!しかも70分入って、Quicksilverのオリジナルステッカーがついて980円。これってお得じゃない?
■cross over2
出演:ミッチー・アブシャー、CJネルソン、アレックス・ノスト 他
発売・販売:マリン企画
"カリフォルニアの今を感じるサーフDVD"
ロングボードサーフカルチャーの発信源と言えば、"ハワイ"か"カリフォルニア"であろう。もちろん、オーストラリアやインドネシアなど、世界の様々な場所からニュームーブメントを発信はしているが、大きな主流としていつの時代も発信し続けているのは、やはりこの2箇所である。
ハワイがのんびりとしたローカルのりで1つの方向性に向いていくとしたならば、カリフォルニアは自由にアグレッシブに色々な方向に向いて、後に1つにまとまっていく傾向にあると、僕は思っている。
カリフォルニアスタイルは、実に、色々なスタイルがあって、常にチェックを� ��ておかないと時代が見えてこない。
この"cross over2"は、ニューロングボードスタイルから、クラシックスタイルなのにまた注目を浴び始めたものまで、様々なスタイルを見ることができる。
大きい波だけでなく、ジャパニーズサイズの波でもスタイルを出している彼らのライディングはイメージトレーニングとしても良いと思う。
ロング、フィッシュ、クワッド、ハル、トラディショナル、スラスターなど、波に合わせて自由に楽しむカリフォルニアの今をこの1本で感じて欲しい。
■STEP INTO LIQUID
監督:デイナ・ブラウン
出演:レイアード・ハミルトン、ケリー・スレーター、ピーター・メル、ロシェル・バラード、レイン・ビーチリー、
ジェリー・ロペス 他 2003年 アメリカ映画
"何故、サーフィンは愛されるのか?"
多くのサーファーに愛されているサーフィンのクラッシックスと呼ばれる映画"エンドレス・サマー"の名匠ブルース・ブラウンの息子デイナ・ブラウンのサーフ映画が"STEP INTO LIQUID"
トップサーファーから始めたばかりのちびっこサーファーまでアマ・プロ問わず、デイナは追いかけ、サーフィンの魅力を伝えてくれる。タジ、ケリー・スレーター、ジェリー・ロペスなどトップライダーのライディングも見れるし、何と66フィートもの波にも乗っている。160キロの沖合いで見たことも無いような波に乗っているのだ。
宗教の違う子供達にサーフィンをさせ、仲良くさせたり、トウインというジェットスキーで引くスタイルやフォイルボードというエアチェアの変形など、色々なサーフスタイルを見せてくれる。
場所も世界中で撮影。カリフォルニア、ハワイ、アイルランド、タヒチ、ベトナム、コスタリカ、ウィスコンシン州のミシガン湖、イースター島など、本当に世界のあらゆる所で撮影。
ここ で印象的なのは、サーファー達が皆笑顔であること。心のまま自由に生きるサーフ精神。皆が自然と一体になる喜びを表現している。そして、製作側の愛情も伝わってくる。サーファーとぎりぎりのところでの水中撮影、白波に巻き込まれるかと思わせるような至近距離での空撮、フィルムの焼き付き部分まで使っている編集。出演者、製作者共にサーフィンを愛していることが手に取るように分かる作品である。
では、何故、サーフィンは愛されるのか?
それは、毎日違う顔をした波に乗るからであろう。まったく同じ波はありえない。だからこそ、最高の波を求め、常に新鮮な気持ちで向かい合えるのであろう。そして、愛する者同士、気持ちを分かり合えるから。
いろいろなサーフィンに対する愛情がたっぷり詰まったこ� ��作品で、サーフィンの魅力を感じて欲しい。
SK8
監督:中村幻児
出演:村川絵梨、小倉久寛、須藤理彩他
2004年 日本映画
"出会いと別れ"
白血病の女の子がスケートボードで四国88ヶ所のお遍路の旅をしている様子を描いた"ロード88 出会い路、四国へ" その旅の中で少女が出会った人は、昔売れていたコメディアン、会社が苦しくて犯罪に手を貸してしまった社長、そして子供の頃いなくなってしまった母。88ヶ所巡りを歩くかわりにスケートボードでしているだけなので、特別派手なトリックなどは無く、プッシュとスケーティングだけなのに、何故かスケートのシーンが頭から離れない。きっと心理描写の中に上手く溶け込んでいるので、より心に残るのであろう。このアプローチは僕にとってとても新鮮だった。ストーリーで気になったのは、"出会い"と"別れ"を上手に描いていること。誰一人として完璧な人間などいない。だからこそ、いろいろな人と出会い、影響を受けたり、成長出来るのである。そして別れは、忘れない為の儀式なのかもしれない。ずっと一緒にいると当� �り前になってしまい、大切さに気付かないこともある。でもずっと一緒にいる人のことこそ、当たり前にしてしまってはいけないのである。最近同じ人数人としか会っていない人は、もっと人と出会いましょう。せっかく一度きりの人生なのだから。出会いと別れの大切さを教えてくれるこの作品。ずっと家にこもっている人や、誰とも会わない日々を送っている人に見て欲しい作品です。
■DOG TOWN&Z-BOYS
監督:ステイシー・ペラルタ
出演:セファー・スケートボード・チーム
2001年 アメリカ映画
"LAサーフスケートの全て"
トニー・アルバ、J・アダムス達のゼファーチーム"Z-BOYS"と言えば、スケーターやサーファーなら皆知っていることだろう。彼らがサーフスケートを作り出し、近代スケートボードを創り出した男達なのだから…。そんなZ-BOYSのドキュメンタリーフィルムがこの"DOG TOWN&Z-BOYS"だ。まず、よく写真やフィルムが残っていたものだと感心する。60年代、サーファー達の間で流行したスケートボードは65年頃下火になった。カリフォルニアルート66号の終点、北は金持ちのサンタモニカ、南はゴーストタウンのベニスビーチ。67年に遊園地は閉鎖され、桟橋でローカルサーファー達がしのぎをけずっていた。その頃シェイパーのジェフ・ホウやスキップ、イングロム等が作ったサーフショップが"ゼファー"だ。そこの革新的なボードを求め集まってきたスタイルを持つ若者達でチームを結成した。その中に現アルバスケート元世界チャンピオンのスケーター"トニー・アルバ"や伝説のスケーター"ジェイ・アダムス""ステイシー・ペラルタ"などがいた。ステイシーはチームを持っていて、トニー・ホーク やトミー・ゲレロを発掘したり、クレッグ・ステシックとビデオを作り始めたり、この作品の監督も務めている。日本の伝説スケーター"ショウゴ・クボ"もゼファーのメンバーだった。Z-BOYSの伝説は色々聞いてきた。特にハリウッドの屋敷のプールの水を抜いて、こっそり入って、スケートをして、エア技が世界で最初に誕生したとか、全米の大会にいきなり出場して勝ちまくったとか、古いスケート雑誌で見たことはあった。しかし、今回フィルムで事実を見せ付けられると、本当に衝撃的である。"あの時代に、あのトリックを!!"という衝撃より、"こんな風にして新しい時代が生まれるんだ!!"という感動の方が大きかった。大人になって当時を振り返る彼らの言葉は全てが力強く、"スタイル"にこだわり、仲間という絆で結ば れていたムーブメントを作り出した男達に、変な迷いは無かったのだろう。"サーフィンのようにスケートボードをしたい""スタイルを追求したい"ただそれだけのためにスケートを楽しみ、今のスケートの原型を創り出した。スターライダーになってチームがばらばらになってからは、クスリに手を出した人、金を求めスケートが楽しめなくなった人、失踪した人など人生様々だが、この映画を通して何かが誕生する時の瞬間を見ることができたような気がして、なんだか興奮してしまった。スケートボード、サーフスケートの歴史を見て、カルチャーの本流を多くのスケーター達に知ってもらい、もっと楽しいスケートライフを送ってほしいものである。
■ワサップ!
監督:ラリー・クラーク
出演:ジョナサン・ベラスケス、フランシスコ・ペドラサ 他
2005年 アメリカ映画
"貧富の差とスケートボード"
サウスセントラルというゲットーに住んでいるスケートボード好きの若者が高級住宅街のビバリーヒルズにスケートを楽しみに行って巻き込まれる事件から、自分達を考えていく様子を描いた作品。
「キッズ」「ケンパーク」「ブリー」など若者のストリートライフを撮り続ける監督ラリー・クラークらしく、ストリートをリアルに描いている。ストリートで集まって、階段越えやスケーターズロックを大音量で使うなど、スケーター達には"リアル"なテイストで入っていきやすい作品であろう。サウスセントラルは黒人とHIPHOPと銃の街。そんな 中、若者達はスケートを愛し、パンクやロックを好み、ラテン系の自分達のアイデンティティを探しつつ笑いながら生きている。銃を持たず、無邪気に笑って生きていこうとする彼らに、何故か悲しみを感じてしまった。仲間が殺されても、祈り、笑うしかない。復讐をすると、銃で撃たれ、新たな悲劇が生まれることを知っているからだ。たまたま遊んでいたら警察に捕まり、女の子と知り合って家に行くと乱闘になり逃げていると住人に銃で撃たれる。仲間を失うと逆上して復讐に行く作品は多くあるが、自分達の中で悩み、どうしようも無いからと悲しみ、ただ逃げていく。白人でも黒人でもない彼らの悲しい宿命がじわじわと伝わってくる作品である。楽しくスケートで遊んでいる時と街の中を逃げるためスケートに乗っている無� ��情な時の彼らの顔が脳裏に焼きついている。世界中のすべてのスケーターが笑って楽しめるような世界になってほしい。日本に住んでいるから、貧富の差や人種問題をあまり感じないが、この作品はじわりじわりとその現実を突きつけてくる1本である。
■スケート・オア・ダイ
監督:ミゲル・クルトワ
出演:ミッキー・マウ、イドリス・ディオブ、エルサ・パタキ 他
発売:アスミック 2008年 フランス映画
"フランスのリアルストリートがわかるエンターテイメントSK8ムービー"
EXやトリプルX以来のスピード感あふれる本格的エクストリームムービーを見つけてしまった。それがこの"スケート・オア・ダイ"
パリのリアルストリートをうまくストーリー化し、スケートボードを使ったエンターテイメントムービーだ。パリのインラインスケートシーンであるフライデーランや、ストリートバスケのシーン、クローズのクラブイベント(これは少しデフォルメしすぎているが、ストーリーの中で見るとまったく気にならない)、スケーター達。どれもリアルに表現出来ている。ファッションもチープでなく、VANSやNIKEもスケートデッキのシューズをきちっと履いているし(スタイリストがわかっていないとスケートボードの シーンなのにテニスシューズとか履かせたりして無理があったりする)、フランスのストリートとスケートファッションもうまく融合されている。
さらに、ヨーロッパのエンターテイメントスケーター達が吹き替えや出演しているので、トリックも最高。VANSのオーストリアムービースタースケーター"Chris PFANNER"、フランスのEmericaのライダー"Maxime GENIN"など、コンテスト系でなく、ビジュアルで世界に発信するライダー達が出演している。彼らはいかにSK8を格好よく見せるかを常に考え、世界に発信しているだけあって、見せ方が上手い。Alexis LAMENDINやAnthony ROUSSE、Jullen MEROORなどヨーロッパの新旧ライダー達のライディングにも注目!!役者の2人のプッシュにもリアリティがある。元々やっていたか、相当練習をさせたと思われる。立ち姿やプッシュやドロップという何気ない様子に嘘があると、一気にリアルさに欠ける。(日本のスポーツドラマに多いが…)
魅せるスポーツであるSK8をストーリーに上手く使い、表現し、映画としての面白さ、カルチャーとしての発信、若いX系の人達の共感、色々な要素が詰まった1本である。これこそリアルストリートのエンターテイメントX系ムービーだ!!
■ロード・オブ・ドッグタウン
監督:キャサリン・ハードウィック
出演:ジョン・ロビンソン、エミール・ハッシュ、ヴィクター・ラサック 他
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2005年 アメリカ/ドイツ映画
誰が私の星をああ言った。
"スケートクラッシックスがよみがえる"
"DOGTOWN&Z-BOYZ"はトニー・アルバ、ジェイ・アダムス、ステイシー・ベラルタなどのスケートボード創世記のLAのレジェンドスケーター達のドキュメンタリーである。ベニス近辺のサーファーであり、サーフショップ"ゼファー"にたむろしていた悪ガキというか不良グループの若者達が世界のスケートシーンをひっぱっていく、あの伝説の頃をフィルミングしたものである。数年前、トニー・アルバが来日した。"DOGTOWN&Z-BOYZ"の印象とは多少違うものの、やんちゃぶりは健在だったので少し安心した。その一方、子供達には気軽にサインするし、スケートに対しては熱く語るし、スケートに対する強い愛情を感じた。だ� ��らこそ、今でもトニー・アルバは色あせない。ステイシー・ベラルタは、現在世界で最も有名なスケーター、トニー・ホークを育てた男でもある。シーンに今でも影響を与え続けている。ジェイ・アダムスは今でもスケートを続けているそうだが、相変わらず暴れまくっているらしい。
そんな彼らを役者を使って再現した映画が、"ロード・オブ・ドッグタウン"だ。
ストーリーは"DOGTOWN&Z-BOYZ"をかなり忠実に再現している。びっくりするのは、役者達がしっかりスケートに乗れていることだ。オーリーはもちろん、フリップもきちっと決めるし、ボールライディングもしっかりしている。さらに表情や心情がドキュメンタリーよりしっかり表現されているため、気持ちが入りやすい。ドキュメンタリー的リアリティではないが� �心情がはっきり分かる部分で、よりリアリティを感じてしまった。
スケートを通して、若者達の心の葛藤が見えてくる。最近のスケーターの中には、ビジネスを先行で考えている人もいる。そんな人に、この作品を見て感じてもらいたい。スケートボードはカルチャーであり、仲間をつなぐツールであり、自分のスタイルを求める自己成長のものであるということを…。
ロード・オブ・ドッグタウンを見ると、スケートボードの全てが見える。
■クール・ボーダーズ(GRiND)
監督:ケイシー・ラ・スカラ
出演:マイク・ヴォーゲル、ヴィンス・ヴィーラフ、アダム・ブロディ 他
2003年 アメリカ映画
"SK8 is FUN"
"クールボーダー"というスノーボードの作品があったが、この"クール・ボーダーズ"はスケートボードの青春コメディ映画。高校の終わりにプロを目指しチームを組んだ変わり者の4人が、バンの上にジャンプランプを積んでスケートのツアーに参加し、アピール。スポンサーをつける為にあの手この手でアプローチするというストーリー。
女好き、バカ、ダメな奴、熱い奴の4人が、まったく通用しそうにない手口を使ってみたりしながら旅をしていく。エッチなところもあり、"jackass"+"グローインアップ"みたいな作品と言うと、バカにする人もいるかもしれないが、スケーター達にとってはお宝物の作品。X GamesのチャンピオンVANSのバッキー・ラセックやボブ・バーン・クイスト、ピエール・リュック・ガニオンなどのトップスケーター達が大会やパークのシーンでガンガン技を決めている。スケーターでjackassにも出ているバム・マージェラやエレン・マクギーニもトリックを見せている。特にバムは演技のシーンもたっぷり。さらに、オールドスクール派には魅力の、あのマーク・ヴァレリーも出ている。スケートのトリックビデオとして見るだけでも価値がある。とにかく、パークも凄いし、ファッションもVANS、ZOO YORK、etnies、ボルコム、elements、emericaなど、スケーターアイテムを着こなしているので、スケーターファッションをキメたい人も参考になる1本である。「だったら、スケートビデオでいいじゃないか?」という人もいるだろうが、ストーリーがとにかく陽気で楽しいので、友達と笑いながら見ると数倍楽しめるだろう。さらに、"自分に素直に生きろ"というテーマが全体に流れているので、スケーター達の核心にも繋がっていると思う。この作品を通して、ますますスケートボードって楽しいものなんだと思わされることだろう。
こんな映画が作れるのも、アメリカのスケートシーンがメジャーであるからこそ。
スケートボードをやっていて難しいことを考えている人、スケーター達を見て、ちょっと恐い人達と思っている人、こ� ��作品を見て考えを改めて欲しい。"SK8 is FUN"
BICYCLE
2006年 MTV作品
"世界のストリートを知ろう"
MTVが制作し、世界中に様々なストリートスポーツを知らしめた"バリオ19"どのジャンルに入れればよいか迷ってしまったが、日本人BMXライダー"田中光太郎"がかなりフィーチャーされていたので、自転車というジャンルに入れることにした。この作品はBMXだけでなく、インライン、B-Boying、スケートボードや中華鍋を使ったスケートボード、フリーランニング、ヨーヨー、川でのサーフィン、インラインサッカーなど世界中のストリートスポーツがぎっしりと詰まっている。日本人もフリースタイルフットボールのマルコを中心とする球舞のメンバーや、B-Boy"KAKU"、ダブルダッチ、BMXも北山努などたくさん出演し、世界に発信された。ストーリーは無く、2分くらいの短いクリップがこれ� �もかというくらい、どんどんたたみかけてくる。世界のストリートスポーツやカルチャーを飽きることなく見ることができるだろう。おしゃれな作りなのでBGVとしても楽しめる1本。映画という観点で、ストーリー性は無いけれど"文化"を世界に広めるという意味では大事な役割を果たしていると思います。(MTVの番組として作ったものをまとめたものなので、制作側にその意図は無いと思うが…)ストリートスポーツに興味のある人は、是非一度見てみてください!!
■スティック・イット!
監督:ジェシカ・ベンディンガー
出演:ジェフ・ブリッジス、ミッシー・ペリグリム他
2006年 アメリカ映画
"ジャッジの立場"
元体操選手だったBMXライダーの女の子が、人の家のプールでストリートをやり、その家を壊してしまう。賠償金の支払と体操クラブに入ることで少年院入りを免れる。彼女は古いしきたりと減点ポイントしか見ていないジャッジのやり方に反抗し、あることを考え付く。体操人生の中で、家族にうらぎられたり、友達も作れなかったり、コーチを信じることができなかった彼女が、ついに信じられるコーチの元、才能を開花させていくという青春ストーリー"スティック・イット!" まず、この作品、オープニングからすごく気持ちが良い。アパッチのリミックスにグラフィティだけで構成され、BMXのシーンにつながる。Z-BOYZを思い出させる人の家のプールでのパークライドっぽいストリートシーン。すごくワクワクさせられる。この作品は、"信じられる人はいるか?"というテーマと"古いしきたりのジャッジを変えられるか?"という2本のテーマで構成されている。ストリートで自由に新しいものを表現するBMXをやっているアスリートにとって、体操は決まりに縛られているかもしれない。さらに、人間関係で点をつけるジャッジもいる。その意識改革をアスリート側がやったら…というストーリーなのだが、ジャッジの変な感情で点をつけられた時点でルールなど成立していない。公平であることがスポーツの基 本。体操だけでなくアイススケートやBMX、スノーボードなど、ジャッジで決められるアスリートは一度見ておくと良い作品です。
■シャカリキ
監督:大野伸介
出演:遠藤雄弥、中村優一、鈴木裕樹 他
2008年 日本映画
"ロードレーサーの世界観"
廃部を迫られた高校自転車部の若者がロードレースを通して、チームの大切さを学んでいく自転車映画"シャカリキ"。漫画で見たことはあったので、ストーリーにはすんなり入れた。元々、名門自転車部の監督の息子が"エース"になれなかったので他校に移り、残された者達が細々と活動しているのだが、インターハイの予選で負けると廃部というがけっぷちの状態の時、1人の若者が入ってきて、チームとしてトラブルがありながらも成長していく話である。ロードレースは"エース"をチームメンバーがアシストして勝たせるというスポーツである。タイヤがパンクしたら、自� �のタイヤを外し、リタイヤしてでもエースに渡す。順番に先頭を走り、風除けになってエースの体力を残させたり、集団の中で道を開けさせるため体を張ってコースを開ける。個人競技のように見えるが、完全なチーム競技である。ヨーロッパでは自転車競技は国民的スポーツである。ただ誰が一番速いかだけでは、ここまでスポーツとして広がらなかったかもしれないが、"チームスポーツ"としての面白さがあるから盛り上がっていくのだろう。"自転車が好き"という同じ感覚の人間がチームになって勝利に向かう。その勝利の為には、それぞれ違う得意部分を必要とする。道を開けさせる為、パワーのある人間、山を昇る時、先導する体力のある人間、風除けになるスタミナのある人間。自分の得意な部分をすべて"エース"の為 に捧げる気持ち。将棋やチェスにも似ている気がする。仲間の為に自分のすべてを出すことの大切さを教えてくれる作品です。
■joe kid on a STING-RAY the HISTORY of BMX
監督:ジョン・スウォアー&マーク・イートン
出演:スコット・ブライトハウプト、ボブ・ハロ、マット・ホフマン、デニス・マッコイ、デイブ・ミラ、スパイク・ジョーンズ 他
配給:ナウオンメディア
2007年2月17日〜23日シアターN渋谷にて限定ロードショー
"BMXの歴史の全てはここに詰まっている"
BMXは色々なスポーツの影響を受け、今が在る。
誕生の時、子供達がモトクロスを真似たくて始まった。ストリートやバートは、スケートボードの影響を大きく受けた。
スポーツを進化させたものは人である。"joe kid on a STING-RAY"の中に出てくる名文句だ。僕もそう思う。
1963年シュウイン社が作った1台の自転車"STING-RAY"からBMXの歴史は始まった。その当時の映像がBMXの歴史を証言している。
子供達にレースの場を与えたスコット。彼みたいな人物が歴史を創り出すのであろう。子供達より少年の心を持った大人。無邪気にBMXの現場を創り出していく。
そして、この映画で語っているのは、レジェンドBMXライダー達。ボブ・ハロー、デニス・マッコイ、マット・ホフマン。
僕もホフマンバイクスのBMXを所有しているが、彼の挑戦を見ていると、余計に愛着がわいてきた。
巨大なバートを作り、エアの高さに挑戦していく。自らケガをしながらトライしていく姿は、BMXに対する何にも変えられない愛情を感じる。
BMXの歴史を語る上で日本� �大きく関わっていたことを、この映画で知った。
1974年、YAMAHAがゴールドカップを開催し、シマノもBMXツアーをスポンサードしている。
そして、あの映画監督スパイク・ジョーンズがBMXの専門誌"Freestylin"のフォトグラファーだったことにも驚いた。
時代が動いていく時、多くの人達が関わり、文化にしていく。BMXの歴史は栄光と冬の時代を繰り返していた。
日本でもそうかもしれない。そこには、情熱あふれるライダーと支える人々がいた。
今、日本のBMXシーンはそこのリレーションがうまく行っていないかもしれない。
もっとBMXシーンが大きくなるには…と考えると、この作品にヒントがいっぱい隠されている気がした。
うれしかったことは、日本でライダー達が開催しているK.O.G.という大会が、この作品の� �に入っていたこと。
そして、ヤンマーこと山本亮二がライダーとしてピックアップされていたこと。
日本のBMXシーンを世界が見ているということだ。
BMXのことを知りたいなら、一度この作品を見るべし。
MOTOR
監督:ジョン・フランケンハイマー
出演:ジェームズ・ガーナー、イヴ・モンタン、三船敏郎他
1966年 アメリカ映画
"F1という世界"
'60年代のF1の世界を描いた"グラン・プリ" モータースポーツ界の頂点としてレーサー、メーカー、それらを取り巻く人々をゆったりと時間をかけ映し出している。冒頭のモナコのレースシーンだけでも20分近くあり、分割映像やオンボードカメラ目線など、当時では画期的な手法で表現していて、今のF1TV中継のルーツ的な部分がたくさんあります。三船敏郎が架空の日本自動車メーカーの社長役で出演していて、海外での日本のメーカーの見られ方ってこんな感じなんだなぁと思ってしまいました。モーターレースの最高峰F1の迫力はもちろん、社交界や裏での競争の部分もしっかり描いています。レーサーの考え方、メーカーの考え方、チームの考え方…、いろいろな思いが入り混じり、事故や怪我と戦い、家族や妻そして愛人の助けを借りながら恐怖と向かい合ってレースに臨� �、その中の一握りの人間だけが栄光をつかむことが出来る。特に印象に残ったのは、あるドライバーが「もう走りたくない」と自信を失った時、愛人が「皆あなたの車に夢を乗せて一緒に走った気分になるのよ。私もその1人よ。」と言ったシーン。多くの期待と注目、応援の力は決して失望させてはいけない。大きなものを背負って戦うトップアスリートの気持ちが伝わってくる作品です。
■タラデガ・ナイト オーバルの狼
監督:アダム・マッケイ
出演:ウィル・フェレル、サシャ・バロン・コーエン、ジョン・C・ライリー他
2006年 アメリカ映画
"アメリカンモータースポーツの裏側"
アメリカで人気のモータースポーツと言えば"NASCAR"と"ドラッグレース"。アメリカではF1よりも人気がある"NASCAR"。オーバルコースですべて見えてひたすら高速で走る感じがきっと好きなのだろう。ESPN、FOX、ABCと全米の各局がこぞって放送し、アメリカでは最も人気のあるモータースポーツである。そんなNASCARの世界を人気コメディ番組"サタデー・ナイト・ライブ"で有名なコメディアンウィル・フェレルが主演し、ドライバーも数多く出演、NASCAR全面協力のもと描いた作品がこの"タラデガ・ナイト オーバルの狼"である。エルビス・コステロやモス・デブなどのトップアーチストも出演していることでも、アメリカでの人気度が伺える。主演のウィル・フェレルは"俺たちダンクシューター"や"俺たちフィギュアスケーター"など、バカスポーツもので有名なコメディアン。とにかくアメリカ的コメディスポーツ映画とは"コレだ"的作品になっています。ウィル・フェレル演じるリッキーの頂点に行くまでの道程、事故を起こし人気が転落し、そして復活するというアメリカンモータースポーツにアメリカンドリームがあるということをバカバカしい中にもハートフルに描いている。アメリカ人はこのような作品を見て、モータースポーツに夢を感じるのでしょう。映画が"夢"や"希望"を持たせてくれるメディアの1つであるこ とを確信させてくれる作品でした。"NASCAR""アメリカンスポーツ"大好きな人達には是非見ていただきたい1本です。
■ドリフトヒーロー
監督:小美野昌史
出演:佐藤博樹、神坂美羽、高山猛久他
2010年 日本映画
"日本の現実"
僕の好きな若手俳優高山猛久が出演しているということで見た作品"ドリフトヒーロー" ストーリーとしては、高校生がドリフトに憧れ、免許を取り、すぐにドリフトにチャレンジして、峠でトップドライバーに迫るまでを描いた作品なのだが、この作品は、日本の若者の車離れをリアルに表現している。主人公の同級生は全く車に興味が無く、車を単なる移動手段としてしか考えていない。車を購入する気もないし、免許すら別に必要としていない。電車で十分という今の若者をいたるところに織り込んでいる。昔は高校在学中にも免許を取りに行く人も多かったし、安くてボロボロでもいいから車を買って改造する人も多かった。日本のモーターカルチャーはこの先どうなるのだろうか?サーキットやジムカーナ場、カーショーに行っても、20代30代は本当に少ない。モーターファンの高齢化は確実に始まっている。今、現状 で若い人が出てきているモーターシーンと言えば、"痛車"ぐらいだろう。アクティブに行動する人間の必需品だった車。モータースポーツは1つの大人への階段だったはずなのに、今は完全に終わっている。モータースポーツの若者離れの現実を突きつけた"ドリフトヒーロー"。この作品を見て、少しでも車に興味を持つ若者が増えることを望みます。
■トリプルX
監督:ロブ・コーエン
出演:ヴィン・ディーサル、サミュエル・L・ジャクソン他
2002年 アメリカ映画
"X系のエンターテイメント指針"
僕はこの作品を見た時、ものすごい衝撃を受けた。フリースタイルモトクロス、スノーボード、スケートボード、スノーモービル、モータースポーツ的要素がこれほどまでにストーリーと絡み合って中心になっている映画を見たことが無かったからだ。この作品をきっかけに海外のエクストリームがストーリーに入ってくる映画を探してみるようになったのだ。もちろんサーフムービーとかモータースポーツ的映画は好きで見ていたが、ここまでエクストリームスポーツを最大限に引き出している作品は無かった。今回もどのジャンルで紹介していいか分 からなかったが、モトクロスのシーンが印象的なので、とりあえずモーターのジャンルにした。これは全てのエクストリームスポーツの面白さを表現し、可能性を提示してくれた指針的な作品である。僕も映画を創る人間として、日本の"トリプルX"を作りたいとずっと思っている。エクストリームスポーツは単なる競技スポーツではなく、エンターテイメントとして、言葉を使わず迫力や面白さを表現出来るものである。その可能性を打ち出してくれた作品である。かつてエンドレスサマーを見た時のようなインパクト。きっと"スポーツ"が持つ表現の幅を広げてくれたからであろう。過去の作品でスポーツの動きを映画のスタントとして取り入れたものは数多くあるが、この作品はそのスポーツのカルチャーや背景までしっかり打ち 出している。本当にエクストリームスポーツの面白さを知っている人間が生み出した映画ということがすぐに伝わってくる。X系スポーツのエンターテイメントの指針を打ち出した"トリプルX"一度は見ておくべき作品です。
■スピード・レーサー
監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー
出演:エミール・ハーシュ、クリスティナ・リッチ他
2008年 アメリカ映画
"親子鷹"
ある世代を超えると懐かしいアニメ"マッハGO!GO!GO!" そのアニメの実写化リメイク版がこの"スピード・レーサー"である。モータースポーツの興味を持つきっかけになった作品が"マッハGO!GO!GO!"という人も、今の40代には多いと思われるが、今の子供達にこの"スピード・レーサー"が同じ効果を与えてくれると大変うれしいものである。個人で経営しているカービルダーの父を持つ幸せな家庭。長男はレーサーになり、父の車に乗り、成功を収める。しかし、大手車メーカーの引き抜きに最終的には従い、家を出て行く。そしてレース中、事故で命を落とす。そんな兄の姿を見て育った次男は、父の車にこだわりレースに出たことで、大手メーカーや有名チームに潰されそうになる。しかし、仲間や家族の絆で、苦しみながらもレースに出て、本当のレースとチームの絆を守り抜くとい� �分かりやすい話なのだが、この作品を通して一貫して流れているのが"家族愛"である。子供は父の姿を見て憧れを持ち、人生を知り、自分もその道に進むものである。日本では会社勤めの人が多く、働く父親の姿を見せる機会が少ない。子供は父の仕事への憧れを持つチャンスがなかなか無い。真剣な父の姿を見せることで、"親子鷹"は生まれるのである。ただ子供がやっていることを怒ったりするのでなく、やっている姿を見せることこそ、次につながるのではないか?家族の絆を深めたい家庭で、親子一緒に見て欲しい1本である。
■キャノンボール2
監督:ハル・ニーダム
出演:バート・レイノルズ、ジェッキー・チェン、ディーン・マーチン 他
1983年 アメリカ映画
"車好きなら一度やってみたい事"
"キャノンボール"で公道レースというものを初めて知った人は当時多かったと思う。僕もその1人である。楽しくてバカバカしくて痛快で自由で… とにかく"キャノンボール"の世界はスーパーカー世代の子供達の憧れだった。待ちに待った"キャノンボール2"は、前作で負けたアラブの王子がレースを主催し、キャノンボーラー達が集まるところから始まる。今改めて見ると、ガリ板刷りみたいなチラシで世界中からドライバーが集まってくるとか、ランボルギーニカウンタックに白の塗料を塗って走り、水で落とすと真っ 赤に戻るとか、おかしいところがいっぱいあるが、子供の頃は違和感さえ感じていなかった。ロス-ニューヨーク間を交通規制無視、誰が最速かを競うレースである。あるチームは警官に扮したり、軍の上役に扮したり、あの手この手で切り抜けようとする感じも痛快である。ジャッキー・チェンやサミー・デイビス Jr.、シャーリー・マクレーンの若い頃が見られるのも面白い。ジャッキー・チェン参加の映画らしく、エンドロールにNG集が入っている。車好きの仲間が集まり、車の番組の話になると、"キャノンボールやりたいな"という話になる。もちろん無理なのだが(以前、某有名プロデューサーが特番として制作し、その後誰もやっていない)車好きの心の中に生き続ける映画"キャノンボール"は永遠の娯楽車映画の定番としてずっと残っていくことであろう。
■ワイルド・レーサー
監督:ミヒャエル・ケウシュ
出演:ルーク・J・ウィルキンス、ニルス・ブルーノ・シュミット 他
2004年 ドイツ映画
"ドイツ式公道レース"
アウトバーンの国、欧州車の中心であるドイツの公道レースムービー。日本は峠を攻めるドリフトが公道レースの中心だが、ドイツはアウトバーンのスピードの世界。アメリカ式"ワイルド・スピード"は市街戦ドラッグ的短距離戦だが、ドイツの公道レースはアウトバーンの長距離戦。ドイツ映画だけあって欧州車が数多く出ている。6気筒のポルシェ911カレラ4S、V8のフェラーリ360モデナ、V12のディアブロ、V8DOHCターボのマセラッティ3200GT、BMW E46など、こんなに高級車、スーパーカーが出てくる公道ものは少ない。アメ車ファンにもムスタングマッハ1やダッジバイパーGTS、クライスラールバロンなど、スポーツカーと呼ばれるアメ車がやたらと出てくる。高級スーパーカー好きにはたまらない作品である。サーキットの狼で育ったスーパーカー世代の車好きが実写の世界で車の走りを見たかったという人ならお涙ものの1本でしょう。本編中、やたらと走りのシーンが多く、メーターまわり、シフトワーク、ハンドルさばきとドライビングテクニックがたっぷり。車の撮影のお手本的撮り方をしている。アメリカの生活に密着した車文化と違って、遠乗りするヨーロッパ独特の車文化から発生したことを感じさせる映画です。
■ワイルド・スピードMAX FAST&FURIOUS
監督:ジャスティン・リン
出演:ヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ミシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・ブリュースター 他
配給:東宝東和 2009年10月9日〜公開
"タイヤのにおいや煙も目に染みる車好きなら誰もが五感で味わえる一本"
"ワイルド・スピード"シリーズは僕も好きなカーシリーズなのだが、ドリフト寄りとかストリート寄りとか、片寄りすぎて自分の車の好みに合わないと、少し苦手な人もいたかもしれない。しかし、今回は、ドリフトカーやマッスルカーはもちろん、SUVのカスタムカーや、ブリブリのローライダーなど、カスタムカー&チューンナップカー好きの全てを満たしてくれるカーラインナップ。スクリーンで見られるカスタムカーショーのような仕上がりになっ� �いる。
しかも1作目のヴィン・ディーゼル扮するドミニクと、ポール・ウォーカー扮するブライアンのコンビが復活。3作目のTOKYO DRIFTの最後に少し出ていたけど、この回を見ると納得。
個人的には、1作目2作目をこの作品を見る前にDVDで見て、この作品を見た後に3作目を見ることをおすすめする。
カスタムの面白さ、ドライビングのリアリティ、公道レースのドキドキ感、車を魅せる喜びなど、車好きの全てが詰まったこの作品。車好きなら必ず見るべし!!
ストレートな友情と愛情表現もスピード感あふれていて、ストーリーも突っ走っていて、すごく時間が早く感じ楽しめる一本である。
■DUST TO GLORY(ダスト・トゥ・グローリー)
監督:デイナ・ブラウン
出演:マイク"マウス"マッコイ、ジミー・バッサー、ロビー・ゴードン、ジョニー・キャンベル、ライアン・アルシエロ他
配給:グラッシィ 2006年7月22日〜シアターN渋谷にてロードショー
"砂のチューブの中で"
"DUST TO GLORY"は、あのサーフィン映画"エンドレス・サマー"や"栄光のライダー"を監督したブルース・ブラウンの息子デイナ・ブラウンが撮った作品である。
デイナ自身も前作"ステップ・イントゥ・リキッド"でサーフィン映画を撮り、まさに、親子でサーフ・モーターのシーンのバイブル的映画を作っている。
先日品川で、来日していたデイナ・ブラウンを会見した。DUST TO GLORYパーティ以来、2度目である。
サンダンスの映画祭で"ステップ・イントゥ・リキッド"を観たライダー"マウス・マッコイ"が声をかけ、デイナをバハ500を見せに連れて行ったそうだ。
バハ1000とは、メキシコの西側にある砂漠だらけのバハ・カリフォルニア半島の1000マイル、つまり1600kmを不眠不休で車やバギー、オートバイで走り抜ける世界で最も過酷と言われるダートレースだ。
今年グアムに、Smokin'Wheelsという3時間耐久のダートレースを見に行った。優勝は、おなじみのリック・ジョンソンだった。
砂を煙の様に巻き上げ走る。徐々に砂が作り出す波が大きくなっていく。グアムではそのくらいだったが、DUST TO GLORYの世界、バハ1000では、ハワイの波くらい、大きなチューブのように見えていた。サーファーがチューブから出てくるように、カラフルだが汚れまくった車体がチューブの中から顔を出していく。
トップサーファー達に感じるドキドキ感が襲ってくる。カメラ50台と4台のヘリは、そんなレースを追い続けた。
この作品が描き出すパワーとスピードは、このレースに関わるすべてのドライバー、メカニッククルー、大会関係者の情熱を浮かび出させていく。
チームメイトとの友情、死人が出ても止まらないレース、親子で参加し、レースの中で感じる親子愛。
いくつものドラマがすごいスピードで駆け抜けていく。
特に注目すべき点は、フォーカスワークとカメラの距離感である。2人もしくはクルーといる時、人物の関� �性を奥の人物から手前の人物にフォーカスを送っているカットが多々ある。2人の人間関係を表情中心に見せている。
カメラの距離感としては、すごく近いところでピットクルーを見せ、自分もクルーの一員的目線で見せたかと思うと、レースの状況は空撮などの遠い距離から客観的に見せている。このカメラワークの感覚で、よりドラマティックにドライバー達を表現しているのではないだろうか?
普段の日本のスポーツ中継は、事実を抑えているだけのカメラワークだが、DUST TO GLORYは、ドラマチックに、このレースを撮っていく。
このカメラワークこそが、単なるレース中継でなく映画作品として感情移入させるように出来ている所以なのではないだろうか?
品川で会ったデイナは、奥さんと共にすごく良い笑顔で出迎えてくれた。スポーツの中にドラマを見つけていく男は、いつも温かい。
■SUPER CROSS(スーパークロス)
監督:スティーブ・ボーヤム
出演:スティーブ・ハウィー、マイク・ボーゲル、タイラー・エバンス、ジェイムズ・スチュワート、リッキー・カーマイケル、チャド・リード、リック・ジョンソン 他
配給:日活 2006年9月〜シアターN渋谷にてロードショー
時肉loafsファーストアルバムが出てきたのですか?
"オイルの匂いと砂煙と"
オフロードバイクが、スタジアムに作られたダートコースの中で、セクションを超えトリックしていく"SUPER CROSS"
BMXのダートと比べても、高さも距離も格段に違うし、以前日本で"SUPER CROSS"が開催された時も、度肝を抜かされた。
ワンメイクのイベントは日本でも多々開催されている。例えば、お台場で開催されている"Multi Plex"は毎年恒例のものとなっている。
この映画"SUPER CROSS"の魅力は、監督のスティーブ・ボーヤムがエクストリームを愛している人であることだ。
LAでサーフィン、スキー、モトクロスなどライダーとしても活躍し、スタントマンとしても数々の作品に参加している。
2001年には「モトクロスにかける夢」を監督し、エクストリーム大好きっぷりを匂わせている。
ライディング、特にスタイル的なことはそのジャンルを知らないと魅せることができないと思うが、この監督はライディングなどもきちっとフォローしているのでMotoXの魅力がしっかり伝わってくる。
さらに、本物の有名ライダーが多数出場していること。チャド・リード、ジェームス・スチュワート、タイラー・エバンスと、今世界のトップライダーからリック・ジョンソンなど往年のレジェンドライダーまで、ス� ��ーライダーが出まくっている。
ストーリーとしては、兄弟の愛が役者によってきっちり演じられているのでMotoXファンじゃなくても楽しめる。
この作品は、誰もがモトクロスの魅力を感じることができる作りになっている。
では、モトクロスの魅力って何だろう?まずは、巨大なセクションだろう。スケートボードやBMXのストリートセクションの何倍の大きさもあるジャンプ台。
セクションに入っていくスピード、そして高さ。近くにいると、完全に見上げないとエアが見れないほど、すごい高さで飛んでいき、上空でトリックを決められるとアドレナリンが爆発していく。
そしてオイルの匂いと砂煙が五感全てを刺激してくれる。250ccバイクが繰り出す無限のパワーをこの映画を通して感じて欲しい。
■世界最速のインディアン
監督:ロジャー・ドナルドソン
出演:アンソニー・ホプキンス、ダイアン・ラッド、ポール・ロドリゲス 他
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2007年2月テアトルタイムズスクエア他全国ロードショー
"カスタムの最終型"
2006年12月からMTV JAPANで"JAP STATE"という車とバイクのカスタム番組を制作した。
6話完結で7台の車やバイクをカスタムした。その最終回でアメ車界で有名なフォトグラファーが「やればやるほど難しくて楽しい。死ぬまでやりたい。」と、カスタムへの情熱を語っていた。
まさにその最終型ともいえる人物こそ、"世界最速のインディアン"の主人公バート・マンローであろう。
1899年ニュージーランド生まれで1901年に創業したオートバイメーカー"インディアン"をカスタムし尽くし、ユタ州ボンヌビルのソルトフラッツで世界最速を目指すという実話を映画化した作品である。
バート・マンローを「羊たちの沈黙」で博士を演じていたアンソニー・ホプキンスが演じている。
カスタムにはまる人間は究極を追い求める。夢といえば美しく聞こえる が、ただ好きなだけなのであろう。
年老いても好きなことだけをやり続ける男。子供の頃のような瞳でバイクと対峙し続ける。僕にとっては理想の姿である。
怖いイメージしかなかったアンソニー・ホプキンスが、今回は夢を追う優しく純粋な男という意外性。
そして途中からそんなことすら忘れさせてしまうナチュラルな表情。「ニューシネマパラダイス」のおじいさんを思い出させてくれるようなやすらかな表情、温かさに包みながらも信念を貫く強い意志。
モータースポーツやカスタムって本当に単純なことなのかもしれない。
人より速く走りたい、自分だけの1台を作りたい。そんな単純なことだからずっと愛することができるのかもしれない。
きっとバート・マンローはバイクをカスタムしながら、自分自身 の心をもより強固なものカスタムし、誰にもハンドルを曲げられない、真っ直ぐに走れる心とバイクを作っていたのであろう。
モータースポーツのスピリッツと人生の価値を教えてくれる実話を元にした作品。カスタム最終型まで行った男だから伝えられる真実の物語である。
■栄光のライダー (ON ANY SUNDAY)
監督:ブルース・ブラウン
出演もしくは声の出演:スティーブ・マックィーン、マート・ロウウィル、マルコム・スミス 他 1971年 アメリカ映画
"DUST TO GLORYのルーツはここに在った"
"joe kid pn a STING-RAY"というBMX映画を見た時、BMXの伝説のライダー達が、BMXを始めたきっかけは"栄光のライダー"を見たからだと言っていたので、レンタルして見ることにした。
監督はブルース・ブラウン。エクストリーム好き、サーフィン好きなら誰もが知っている"エンドレス・サマー"の監督であり、"STEP INTO LIQUID"や"DUST TO GLORY"の監督ディナ・ブラウンの父である。
オープニングバックで子供達が初期のBMXに乗っている。これが彼らの言っていたシーンなんだ。
今から思うと、普通のシーンだが、1970年代初頭には衝撃的であったのだろう。何と言ったって、BMXの存在がほとんど知られていない頃だったから。
さて作品のほうはと言うと、とにかく70年代初頭のバイクレースの全てのカテゴリーを一気に見れる作品。その一言に尽きる。
ダートレース、モトクロスレース、ロードレースだけでなく、山昇りレースやスノーレースまで、ありとあらゆるバイクレースを見ることができる。
ただレースを紹介しているのではなく、スタート時にライダー達の顔をクローズアップにしたり、その人の生活を見せたりすることで、親近感を味あわせてく� ��る。
以前、彼の息子ディナ・ブラウンと会った時、ちょうどダートレースの"DUST TO GLORY"が日本公開直前だった。その時、彼は"人が面白いから撮り続けているんだ"と言った。すごく印象的な言葉だった。
ただトリックをおしゃれに見せるスポーツビデオはそこら中にあるが、この親子の考え方は、僕的にすごく痛感するところがある。彼らの作品が、ただのスポーツビデオの枠にとらわれない理由はここに在る。
70年代初頭のバイクレースを語りたいなら、是非見るべき1本である。
■ワイルド・スピード
監督:ロブ・コーエン
出演:ヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ミシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・ブリュースター 他 2001年 アメリカ映画
"ゼロヨンとチューニングカー"
今や人気シリーズとなった"ワイルド・スピード"シリーズの1作目であるこの作品。まるでOptionビデオ。チューニングファンには満足できる作りになっている。トラックを襲うのにチューンナップしたCivic。タイヤやTOYO TIRE。BLITZがチューンナップをしており、バイナリでカラーリングもグラフィックもばっちりの車が走っている。少し笑えるのは車を襲う時、オークリーのゴーグルをしていること。確かにバイクや車の世界でオークリーのゴーグルはメジャーだが、なんで?しかし、散弾銃でも割れないオークリーだからなぁ…。
ワイルド・スピード1作目はゼロヨン。しかも、ストリートゼロヨン。本当にOptionの企画みたいだ。まず、ポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルのドライブテクニックがリアルであること。監督のロブ・コーエンの演出も面白い。CGでエンジンの中まで表現していてNOSの伝わり方も分かりやすい。HKS USAがバックアップしているらしく、店内にはやたらとHKSの商品がディスプレイされている。富士山のふもとのあの会社がハリウッド作品の中心に映っていると思うと、何だか不思議に感じる。Civic、スープラ、RX8などの日本車はもちろん、シボレー、ムスタングなどアメ車好きにも楽しめる。ドラッグ仕様の車とドラテクが楽しめるシーンは、すごくたくさんある。特にトリプルXでエクストリーム好きの人にもおなじみのヴィン・ディーゼルの演技はリアリティ十分。
ストーリーは、友情の大切さを教えてくれる。ハンドルを握る者同志さからわかること。しかもストリートを生き抜く友達。カスタム、チューニング、ストリート好きなら誰もが楽しめる作品。特に"ワイルド・スピード2"を見るなら、その前に見ておくと楽しさも倍� ��するはずだ。
■ワイルド・スピード×2
監督:ジョン・シングルトン
出演:ポール・ウォーカー、リュダクリス、タイリース・ギブソン、エヴァ・メンデス、デヴォン青木 他
2003年 アメリカ映画
"ストリートチューニングカーの世界"
1作目のゼロヨンの次は公道ストリートレース。もちろんゼロヨンも公道レースだが、直線一発でなく街を使ったチューニングカーのストリートバトル。まさにこれもOptionの企画そのもの。出てくる車もHONDA S2000、三菱ランエボZ、エクリプス・スパイダー、SUBARU WRX… とにかくまさにOptionの世界。
前作と大きく変わったのは監督がジョン・シングルトンになり、並走カットがやたらと多くなったこと。並走で撮るということは、役者自身がカーアクションをこなさなくてはいけないということ。なんとデヴォン青木は免許も持っていなければ車を運転したことももちろん無く、ドライビングリハーサルに入ったそうだ。三菱のドライビングチームがレッスンをつけ、撮影前にはドリフトもこなせるようになったらしい。
アメリカでは日本のチューニングカーがブームである。D1もラスベガスなどで展開するようになったし、HKS USAなどの商品も売れているらしい。キャノンボールなどが好きなアメリカ人にとってストリートチューニングカーの世界は嫌いなはずがない。
内容的には、昔の友人とタッグを組んで潜入捜査をするというストーリーだが、ストレートでわかりやすい。ドライビングシーンもとにかく多くて、チューニング好きにはたまらない1本である。
■ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT
監督:ジャスティン・リン
出演:ルーカス・ブラック、ナタリー・ケリー、BOW WOW、北川景子 他
配給:UIP 2006年9月16日〜ロードショー
"日本発ハリウッド逆輸入型レッドゾーンムービー"
最近また再加熱しつつあるドリフト&チューンナップシーン。2007年の東京オートサロンはなんと3日で24万人も集めた。D-1も世界進出を着実に始めている。そして忘れてならないのが、この文化が日本発のモータースポーツであるということだ。F-1もル・マンもバハもパリダカも、いろいろなモータースポーツはアメリカとヨーロッパの手によって作られた。
このドリフトというか、公道ものの根底は、HKSやBLITZなどのパーツメーカーやEVO、シルビア、RXなど国産車メーカー、Optionなどの雑誌がずっと支え続けた文化だ。ドリフトキング通称ドリキンの名を持つ土屋圭一などのドライバーや、ノブ谷口、ORIDO学などの� ��役ドライバー、さらにD-1のノムケンやシャークなどのレーサーが育ててきた。
以前、カスタムカー番組内でEVO[をカスタムしたのだが、マシンの性能を上げていくのも楽しいし、作ってしまえばスピードを求め走らせたくなってしまう。スピードへの興味は誰の本能の中にもある1つの要素なのではないだろうか?
"ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT"のみどころは、普段僕たちが見慣れている街中が舞台であるということ。
渋谷のスクランブル交差点、明治通り、首都高、道玄坂、新宿の大ガード。いつも見慣れた風景をチューンナップカーが走り抜けていく。実はハリウッドに再現されたセットが大部分らしいが、それを聞くと、ハリウッド映画のスケールをリアルに感じてしまう。
しかも、カーアクションはドリキン土屋氏がアドバイザーをやっているだけあってスリリングでエキサイティング。
こういう時、作りものの絶対ありえない事が(ex ジェット噴射で飛ぶとか)が起こると冷めてしまうが、モーターファンががっかりすることのない作りになっている。
でも少しがっかりなのは、まだ日本の文化ってアメリカに伝わっていないのか…と思うところ(主人公の学校での教師役柴田理恵とのやりとりなど)
でもストーリーは直球で、誰もが楽しめ、モーターファンなら納得のカーアクションは保障できる1本。
日本発のモーターカルチャーは見ておくべきであろう。
■DAYS OF THUNDER
監督:トニー・スコット
出演:トム・クルーズ、ロバート・デュバル、ランディ・クエイド、ニコール・キッドマン他 1990年 アメリカ映画
"アメリカのレーススピリッツを堪能"
オープニングからノースカロライナのデイトナ500のレース会場。フラッグ、コース、ピット…レースの匂いがそのまま伝わってくる感じがする。主役コールを演じているのは若き頃のトム・クルーズ。コールがレースに入ってくるきっかけが、ESPNのテレビで見たレースという台詞があるが、やはりESPNはアメリカのスポーツではメジャーな放送局なんだと改めて思い知らされた。余談だが、アメフト映画の「エージェント」これもまたトム・クルーズ主演だが、この作品ではESPNの社内までが映画の舞台になっている。
アメリカのレースらしく、オーバルコースのぶつかり合いのある迫力あるシーンもたっぷりだし、車を作っているビルダーのシーンもあるので、車ファンも� �分楽しめる作りになっている。どのスポーツでもそうであろうが、"恐怖"という壁が自分の実力を縮ませることがある。リーフに突っ込んだサーファーがビックウェーブに乗るのを恐れたり、ダイビングキャッチで腕を折った野手が球を追いかけられなくなったり… この作品の中でもクラッシュを抜ける時に事故ったコールが、同じような場面でアクセルを踏めない様子を描いている。"恐怖"という壁は全てのアスリートにとって、とてつもなく大きくのしかかってくるものなのだ。その壁を乗り越えるには、選手自身の勇気、同じスポーツをしている仲間、チームメイトや友人、恋人の力などいろいろなものが必要だとこの作品は教えてくれる。
レーススピリッツ、それはスピードに対する欲求と勇気。だからこそ、僕達はモ� ��タースポーツに恋してしまうのである。車はただの機械ではない。なぜならドライバーやチームのスピリッツがそこにこめられているから。アメリカのレーススピリッツを堪能したいなら、"DAYS OF THUNDER"を見るべきである。
■60セカンズ
監督:ドミニク・セナ
出演:ニコラス・ケイジ、アンジェリーナ・ジョリー、ジョバンニ・リビージ 他
2000年 アメリカ映画
"車オタク必見のオタクムービー"
モータースポーツというジャンルで扱って良いか悪いか分からないが、車好きならきっと楽しめる作品であろう。
ニコラス・ケイジ主演、車泥棒のストーリー"60セカンズ" オープニングから子供達のダートカートのシーンで始まる。ニコラス・ケイジ扮するメンフィスのモータースポーツや車に対する愛情を感じさせられる。このメンフィス、大の車好きであり、車オタクである。車種などに詳しいだけでなく、メカニックも完璧。その究極の形が車泥棒だというわけである。マフラーの音を聞いて車種を当てるのはもちろん、日頃の仲間とのトークも"超人ハルクに出てくる車はフォードだ"とか、「刑事コロンボ」に登場する車についてなど、車オタクらしいトークを展 開していく。車好きならだれもがしているトークで共感が持てることだろう。
車もとにかくあらゆる名車がスクリーンを走り抜ける。アメ車、ヨーロッパ車、何でもあり。
'67ムスタングGT500、'83キャデラックのエルドラード、'39のフォード、フェラーリやメルセデス、ともかく50台の車を盗むというストーリーだけあって50台の名車が出てくる。しかも、しっかり走っているシーンが見られるのも素晴らしい。笑えるのは、車を使ったエロトークの見本もばっちりあるところ。"なめらかにギアを入れて"とか"俺の股間の4気筒"とか、車好きが使えるトークネタまである。
新車好き、カスタムカー好き、そしてニトロを積んだドラッグカーみたいなレース好き、全ての車好きが楽しめる作品である。車を愛する人の作品であ る。モータースポーツのスピリットとは少し違うが、ぜひ車好きには見て頂きたい1本である。
BASKETBALL
監督:サナー・ハムリ
出演:クイーン・ラティファ、コモン、ポーラ・パットン他
2010年 アメリカ映画
"トレーナーの力"
ニュージャージーに生まれ育った"NETS"を愛するリハビリトレーナーがNETSのスターバスケットボーラーと出会うことから始まるラブコメディ映画"恋のスラムダンク"クイーン・ラティファ演じるリハビリトレーナーが偶然ガソリンスタンドでスター選手と出会い、同居人の女友達が彼女を利用してその選手と付き合い始める。そんな時、彼は試合中大怪我をする。セレブになりたかった友達は、来年引退ともささやかれる彼の元から去ってしまうが、彼女はトレーナーとして彼を必死に治していく。体のリハビリだけでなく、昔バスケを始めたコートに連れて 行ったり、けつを叩いて心のケアもしている。僕もいろいろなスポーツのトレーナーと出会ってきた。名トレーナーと言われる人は、チームのメンバーの一員のように、選手達と一緒に戦い、プライベートもよく知っている。心も体もケアしている感じがすぐにわかる。トレーナーの力はチームや選手にとって実に大きいものである。スポーツは体だけでなくメンタルも大きく影響する。ただ体だけが完璧でも、試合で使い物になるわけではない。そんなトレーナーの力の大きさを痛感できる作品です。ラブコメ映画が大好きな人も楽しめるライトな内容なので、一度見てみてはいかがでしょうか?
■SPACE JAM/スペース・ジャム
監督:ジョー・ピトカ
出演:マイケル・ジョーダン、ウェイン・ナイト、テレサ・ランドル他
1996年 アメリカ映画
"最強のスタームービー"
往年のNBAが好きな人ならこの作品は必ず楽しめます。マイケル・ジョーダンが主演し、ユーイングやチャールズ・バークレーなどのトップ中のトップバスケット選手や殿堂入りのラリー・バードなどが出演する"SPACE JAM" バックスバニーなどのアニメキャラとマイケル・ジョーダンが他星のアニメキャラとバスケットで勝負するというシンプルなストーリーのコメディ映画。ユーイング、バークレー、ラリー・ジョンソン、ショーン・ブラッドリーなど当時のNBAトッププレイヤーのバスケの才能を奪った宇宙人達。バックスバニーとバスケの試合で勝つとバックス達、アメリカのアニメキャラを宇宙に連れて行くと約束をさせた。助っ人として当時MBLでプロ野球選手になっていたMジョーダンをアニメの世界に引き入れ、マイケルは宇宙人達に、試合で宇宙人が負けたら選手達にバスケの才能を戻すことを約束させる。アニメ、バスケのスター総出演のイージーな作品と言えばそうとも言える。当時アメリカの批評家達は、この作品をすごく否定した。しかし興 業としては大成功だった。当時のトップアーティスト、RケリーやJay-Z、LLクールJ、バスタライムス、クーリオ、モニカなどHipHopやR&B界総出でサントラに参加し盛り上げた効果もあったと思われる。スポーツ、音楽、アニメのスター達で1つの作品を創り、子供達を中心に誰もが楽しめるものを発表することはとても素晴らしいと思う。様々なエンターテイメントがしっかり組むことで広がりも増えてくる。アメリカにとってバスケ、R&B、HipHop、アニメなどは文化であり、生活であり、憧れであるということを再認識させてくれる1本。これぞ最強のアメリカンスタームービーと言えるだろう。
■モア・ザン・ア・ゲーム
監督:クリストファー・ベルマン
出演:レブロン・ジェームズ他
2008年 アメリカ映画
"スーパースターの作り方"
世界が注目するNBAのスーパースター"レブロン・ジェームズ"と彼を取り巻くチームメイトとコーチのドキュメンタリー作品"モア・ザン・ア・ゲーム" オハイオ州の救世軍の体育館で出会った4人と1人のコーチ。レブロンやメンバーの中の数人は貧しい生活を送り、父親の顔すら知らない子供達もいた。しかしコーチが彼らの父親的存在となり、バスケットを通じて"人間としての道"を教え、家族同様に扱うと、次第に4人は親友となり、その後同じ高校へ行き、バスケットを続ける。転校生のロメオを加えた才能あふれ家族のような絆で結ばれた5人は"ファブ・ファイブ"と呼ばれ全米でも注目を集めるようになる。高校生にとって異常なまでの熱狂は人生を狂わす時もある。おごりが生まれ、敗北を味わったり、アマチュア規定にひっかかって出場停止になったりするが、そんな数々の苦難を乗り越えられたのも仲間がいたからである。子供の頃からのビデオや当時のTV番組、大人にな� ��てからのインタビューを中心に構成されているのだが、リアリティの中にドラマ以上のドラマを感じる。作られていない本物の表情が、余計にドラマチックに見せているのだ。もしレブロンの近所に彼らが住んでいなくて、コーチであるドリュージョイス2世に出会わなかったら、天才はただの天才で終わり、世界中が注目する選手にはならなかったであろう。プロプレイヤーとしての道を選ばなかったメンバーもいるが、いまだに彼らは家族のような関係らしい。スーパースターは、絆とともに戦う気持ちが持てる仲間を創り出すものなのである。
■バスケットボール・ダイアリーズ
監督:スコット・カルヴァート
出演:レオナルド・ディカプリオ、ロレイン・ブラッコ、マーク・ウォールバーグ他
1995年 アメリカ映画
"ストリートの栄光と挫折"
NewYorkでドラッグに苦しみ抜け出した若者を、若き頃のレオナルド・ディカプリオが演じた、実話を元に作られた作品"バスケットボール・ダイアリーズ" NewYorkのストリートで生きていた1人の青年は、、ストリートで悪さを働きながらも高校に通い、バスケットボール部で活躍していた。治安の悪い街に住み、遊び半分でドラッグや盗みに手を出す仲間達。そんな中でも、青年は学校に通い、校内ではスタープレイヤーになっていった。そんな中、バスケ仲間の1人が白血病で若くして死んでしまう。青年は、ドラッグにのめりこみ、バスケも手につかなくなり、バスケも学校も辞めてしまう。唯一続けたことは、趣味の詩や物語を書くことだった。バスケ仲間の1人がドラッグに手を出さず、スター選手になっていく姿をテレビで見て知る青年。自分もなれたかもしれないと過去の栄光を引きずりつつ、さらにドラッグに身を投じ、殺人や盗みの現場に足を踏み入れていく。アメリカほどドラッ グは近くにないのかもしれないが、日本でも手を伸ばせば、誰もがドラッグの道に入ることが出来る。「自分ははまらないから一度だけやってみよう」とか「やらないと仲間から勇気の無い奴と思われる」など、変な勢いは人生に必要無い。"断る勇気""やらない勇気"こそ本当の勇気だと思う。アメリカではストリートの掟みたいなものがあるかもしれないが、"真の強さ"を知り、ドラッグに手を出さず、自分の力で悲しみ、苦しみを乗り越えて欲しいものである。
■俺たちダンクシューター
監督:ケント・オルターマン
出演:ウィル・フェレル、ウディ・ハレルソン、アンドレ・ベンジャミン 他
2008年 アメリカ映画
"マヌケ度No.1のバスケ映画"
とにかくマヌケでバカバカしくて下品なバスケ映画である。オープニング曲からダサくて下品。その歌をヒットさせたミュージシャン"ジャッキー・ムーン"がバスケチームを買収し、選手兼オーナー兼監督をするというストーリー。リーグがNBAに吸収され、トップ4のチームしか存続できないというところで、主人公のジャッキーは、最下位で動員も無い自分のチーム"トロピックス"を何とかあの手この手で救おうとするのだが、すべてがバカバカしい。選手自らが着ぐるみショーをしたみたり、クマと戦ってみた� ��、バスケと全然関係ないところで頑張る。テンションだけ高くて感情だけで動く男ジャッキーとチームの友情の物語。とにかくバカバカしいのだが、バスケットボールとチームを愛している男達の友情は絶対だということを伝えてくれる。こんな映画が出来るのは、バスケットボールとコメディが大好きなアメリカ人がたくさんいるからだろう。陽気でバカ好きなアメリカ人のための映画だ。ジャッキー・ムーンを演じるウィル・フェレルはサタデーナイトライブの人気者である。アウトキャストのラッパー"アンドレ・ベンジャミン"やウディ・ハレルソンなど大物を使ってバカバカしい作品を作っているにもかかわらず、NBAのピーター・コーネル(日立サンロッカーズに所属していたこともある)を起用するなど、バスケの本質はき� �っと取り入れている。音楽もダイアナ・ロスやクラプトン、マドンナなどのヒット曲を作ったナイル・ロジャースがやっているのだから、実はぜいたくな作品なのである。各界のトップ達がこんなに集まってこんなマヌケな作品を作っているのだから、スゴイ。バスケを使ったコメディ映画としては最高の悪フザケ映画である。
■ウィニング・パス
監督:中田新一
出演:松山ケンイチ、堀北真希 他
2003年 日本映画
"本当の強さを教えてくれる車椅子バスケムービー"
北九州の車椅子バスケットチームを描いた作品。以前、AND1 Mix Tape TOURのオープニングアクトゲームとして車椅子バスケを見たことがある。普通のバスケよりガツガツ当たっていて、格闘技を見ているような興奮を感じたことを覚えている。ゲーム中はやたらと"アツイ"のに、ゲーム終了後、お互いのチームがとてもフレンドリーで全員笑顔だった印象が残っている。松山ケンイチの初主演作品でもあるこの作品は、ひたむきな高校生がバイク事故で車椅子生活になり、その苦悩をしっかり表現している。バスケ部のエースが事故を起こして、彼だけでなく、家族・友達・彼女など周りの生活が一変する。足が使えないことで生活が思うようにいかない本人の悩みはもちろんだけど、それを迎え入れる親、障害者の兄を持っていじめられた妹、学校の中でも変な目で見られたり、彼女の母は交際に反対した りと、今までの人間関係が崩れていく。車椅子バスケと出会い、青年は生きるパワーをもらい、努力を始める。今までエースでパスも出さず、自分でシュートまで持っていった彼も、皆の協力で生きていくことを学んだことで、チームで戦うことを覚えていった。周りの人達も頑張っている彼のパワーに影響を受け、大学を目指して勉強を始めたり、何か目標を持ち始める。障害者で何かをやっている人を見ると自分に無いパワーを感じる。どん底に落ちて、立ち上がってきた人間だから持つ"本当の強さ"は、一緒にいる人間に勇気を与えてくれる。以前、バスケットボールが目に当たり、色が見えなくなった少年のドキュメンタリー番組を演出したことがある。彼とAND1のスタープレイヤー"プロフェッサー"が1on1をして何が変わるの� �?というテーマで作った番組でした。初めて彼と会った時、お母さんと一緒にいないと話せなかった中学生も、今、大学生となり、薬の開発をする人になろうと頑張って勉強をしている。時々クラブチームでバスケを楽しんでいる。僕もたまに彼とバスケの試合を見に行っている。一人の青年が障害を乗り越えていく力は、周りに勇気を与えてくれることを僕は実感している。彼と出会って、障害者だからといって変に何もかもやってあげたり、かわいそうな目で見る必要は無いと感じた。お互い前に進むパワーを持ち、協力してほしいというシグナルが出ていたら協力すればいいし、普通に応援しあい、彼からのパワーをもらい、自分の力に変えればいいだけである。この映画は障害者とどう向き合うのかという問題だけでなく"本当の 強さ"を手に入れるパワーを与えてくれる作品である。
■コーチ・カーター
監督:トーマス・カーター
出演:サミュエル・L・ジャクソン、ロバート・リチャード、ロブ・ブラウン 他
2005年 アメリカ映画
"リアルに勝るドラマは無い"
ケン・カーターという大学で活躍した元名プレイヤーが、地元の高校のバスケットコーチになって選手達と共に成長していく話である。
実際の話をベースにしているだけあって、ストーリーがリアルに展開していく。カリフォルニア州リッチモンドは、産業が少なく、クスリを売ったり、犯罪率が当時非常に高く、高校を卒業する人間も少なく、バスケットボールはNBAに入るか高校までで辞め犯罪者になるかのギャンブル的感覚でやっていた。そんな感じでやっているからチームワークなども成立していない。カーターは就任する時、選手と保護者に契約書を作り、サインをさせた。その内容は、バスケのことよりも学業や生活のこと中心のものだった。 カーターはバスケ部員全員が大学やプロをきちっと目指せる道を作ろうとしていたのである。チームは強くなり、街からも注目を集めていく。その後ストーリーは二転三転していくのだが、これが事実だというのだから驚きである。
スポーツには"教え"がある。野球道、柔道魂…。バスケットにある"教え"が、カーターの口から選手達に伝えられていく。指導者は、スポーツのプレイを教えることも大切だが、その奥にある"人としての生き方"を教えていくことが大事なのだと感じさせられた。MTVが作っているだけあって音楽も最高である。バスケット版"スクールウォーズ"である。
■THE HEART OF THE GAME
監督:ウォード・セリル
製作総指揮:ラリー・エステス
配給:グラッシィ
2006年 アメリカ映画
"ドキュメントが創り出すドラマ"
アメリカの高校女子バスケットチームの監督と選手を数年に渡って追い続けたドキュメンタリー作品であるこの作品。
高校生の女の子達の揺れる気持ち、人種や貧富の違う生徒達、高校生ながら出産し、学校と母とバスケを両立させようとする女の子…。いろいろな問題を抱えながら、チームを強くするために様々なアイデアでトレーニングさせ、試合を組み立てていく監督。選手達の問題は、選手達自身にとことん話し合いをさせ、時に喝をいれ、時に優しく受け入れていく監督。ストリート的個人のバスケをチームバスケに取り入れ、個性を生かしていく。そして、チ� ��ムは年を重ね、州No.1のチームとなっていく。まるでストーリーがあって撮ったのではないかと思わされるくらいドラマチックだった。"スポーツはドラマ"である。そんな言葉を再認識させられる作品であった。ストリートでバスケをやっていた人間がチームに入り、新たに"WNBA"や大学リーグに夢を持つ。貧しい家に生まれても、ボール1つで人生を切り開いていける。そこにはチームメイトがいて、応援してくれる家族や地元の人がいて、父親のような監督がいる。これは作り話ではない。ドキュメンタリーだからこそ、事実だからこそ、説得力がある。"ボール"が人生を変えることができる。"スポーツ"をすることで人生を変えることができる。パワーを与えてくれる本当のストーリーがこの作品に在る。
■CROSS OVER
提供:NIKE 製作・監督・脚本:カーン・コンクイザー+キップ・コンクイザー
製作総指揮:マジック・ジョンソン+ペニー・マーシャル
音楽:チャック・D(パブリック・エネミー)+プロフェッサー・グリフ(パブリック・エネミー)
配給:デックス・エンタテインメント
2005年9月テアトルタイムズスクエアにてレイトロードショー
"世界のバスケットボールシーンの入門書"
マジック・ジョンソンが製作総指揮をしているバスケ映画があると言ったら見たくない人はいないはずである。
"CROSS OVER"はそれだけでも価値がある。そしてジョーダンやバークレーなどNBAのスーパースターが出ているとなると価値はあがる。
世界のバスケシーンを集めたバスケットドキュメンタリームービーであるこの作品、あのバルセロナのUSAドリームチーム、02年の世界バスケでの敗退、ユーロリーグの実態、NBAやAND1など、アメリカンバスケしかなかなか見れない日本で、世界のバスケシーンを見ることができる。
もちろん、ゲーム、アスリートとしてのバスケから、南アフリカで生きる為にやっているバスケシーン、アメリカのストリートカルチャーとしてのバスケも見ることができる。皆、自分のブロックにあるパブリックパークでゴールがある所に集まり、HOOPの周りで遊びだす。そして、そこに音楽があり、HIPHOPシーンと結びついてい� ��。
ゲームとして、カルチャーとして、いろいろなバスケットシーンが詰まっている。
音楽はパブリック・エネミーのチャック・D。ザ・ニューヨークスタイル、ハードHIPHOP。この組み合わせこそ、まさにアメリカという感じである。
日本ではゲームとしてのバスケットが中心である。AND1が来日したり、ストリートバスケがO-EastやAXなどのクラブでやり始めているが、なかなかカルチャーとして定着していない。それはプレイヤーだけが先行し、オーディエンスを育てていないからかもしれない。
だからこそ、この作品はバスケットを"生"で見たことはないけど、少しだけ興味があるという人に是非見てもらいたい。きっと価値観が変わるはず。もちろんプレイするのも楽しいが、見るのも楽しいということがわかるはず。
■AND1 MIXTAPE TOUR in JAPAN【FINAL】
出演:SAMURAI、THE PROFESSOR、BAD SANTA他
2009年12月2日発売
"一人で海を渡ったストリートボーラーSAMURAIの散り際"
森下雄一郎a.k.a.SAMURAI。
NBAを目指してアメリカで挑戦し、NBAの夢が破れ、ストリートボール最高峰"AND1 MIXTAPE TOUR"で唯一のアジア人としてプレイを続けたSAMURAIのラストゲームが収められた作品。
彼は日本のJBLやbjリーグなどでもプレイをすることが出来たはずなのに、現役という世界からあっさりと足を洗い、今はバスケットボールを通じた教育活動に取り組んでいる。
はっきり言って、カメラワーク、音楽はアメリカのストリートを意識した物まねに過ぎない作品である。派手好きな人は見ても面白いだろうが、コアなファンにはオススメ出来ない。
なのに、何故紹介するのか?
森下雄一郎という男の散りざまを記録にして、記憶として保存して欲しいからだ。日本人が世界に混ざりプレイしている姿を忘れて欲しくないからだ。1人の戦い続けた男の姿を忘れず、次のボーラーが出てきて欲しい。
この作品の良し悪しは多く語り ません。ただ、森下雄一郎という男の第1章の終わりを、多くの人に保存してもらいたいと思っています。
OTHERS
監督:ジョン・チュウ
出演:リック・マランブリ、アダム・G・セヴァーニ、シャーニ・ヴィンソン他
2010年 アメリカ映画
"踊るということ"
ストリートダンスをフューチャーし、ダンサー達の競技性(大会)をフォーカスするステップ・アップシリーズの第3弾"ステップ・アップ3"作品も毎回ステップアップしていき、今回の作品はシリーズの中で最も面白い作品であった。ダンス的に言うと、ブレイクダンス"B-Boying"のチームバトルがメインに扱われているのだが、タップやジャズ、タンゴなど様々なジャンルと、今回主役の1人がNY大学の工学部に入った若者という設定なのでエレクトリックな部分もある。BMXやスケーターも上手く取り入れ、ストリートのにおいプンプンの作品で す。友情、愛、裏切り、信頼、いろいろなテーマが上手くストーリーとして綴られているが、ダンスシーンの格好よさは文句のつけようが無い。ダンスの良さもきちっと見せ、B-Boyバトルの真剣勝負も伝わってくる。この作品の良さは、視点が偏っていないことだ。スラムや貧しい子達にフォーカスして、その人達の言い分だけで描かれたダンス映画は今までもたくさんあったが、この作品は主人公の1人として、高校でダンスをやっていたが我慢して、普通に受験し大学に受かった若者を描くことで、様々な境遇の人の"踊る"意味を表現している。貧しい人にとってはダンスという共通点で今まで味わったことの無い"家族"を感じ、普通の生活で愛情たっぷり育てられた若者もダンスをしている時だけ感じる"特別感"や"解放感"を� ��チベーションとしている。ハングリーなことだけがモチベーションではない。それぞれの人間が"スポーツにかける理由"がある。"踊るということ"は人それぞれ理由は違えど、表現することや目標が1つになれば皆で前に進めることを教えてくれる素晴らしい作品です。
■ステップ!ステップ!ステップ!
監督:マリリン・アグレロ
2005年 アメリカ映画
"子供達のスポーツ教室"
NYの子供達が学校別で社交ダンスにチャレンジするドキュメンタリー作品"ステップ!ステップ!ステップ!" マンハッタン、ブロンクス、クイーンズ、ブルックリンとニューヨークの全地区の小学校の中にクラブというか、プログラムを作り、予選から勝ち上がっていく様子、練習風景などを密着している。貧しい地域、犯罪の多い地域、高級な地域、いろいろなところを取り上げている。日本で言うと、地域クラブのような形で無料で希望者を募り、参加させ、Pick Upしたメンバーが大会に出場する。ダンスを通して友達を作ったり、ダンスが出来ても学習態度や生活態度が悪いとメンバーから外されたり、ダンスを通して礼儀や文化、社会を学ばせつつ、スポーツとしての指導をしている。僕も総合型地域スポーツクラブなどでスポーツを時々教えているので、この作品はとても参考になった。スポーツを通じて子供達に教えてあげられること、伝えられることはたくさんある。教える人間もそのことを理解していないといけない。1つのことに集中し、チームで目標を持つことの大切さ。最初は文句を言っている子供やチームを乱す子供、相手の目を見ることが出来ない子供達が大会が進むにつれ、一体化していくのが本当によくわかる。とても勉強になる良い映画でした。
■ターン・イット・ルース
出演:TAISUKE、BENJ、HONG10、LILOU、RONNIE、ROXRITE他
2009年 フランス映画
"B-Boyが背負うもの"
2007年のRed Bull BC OneというB-Boy(ブレイクダンス)個人世界一決定戦と、出場した16人の中から6人をピックアップし、ドキュメンタリーを加え構成された映画"ターン・イット・ルース" 南アフリカで行われたこの大会に集まった世界から選ばれた16人のB-Boy。日本人のTAISUKE(2008年準優勝)も取り上げられ、長崎から東京に出てきた若い頃の苦悩を見ることが出来る。BC Oneの常連でもあるフランス在住のアルジェリア人のリルーや、メキシコからの移住者、アフリカのスラム出身者と、この大会に出場しているB-Boy達は裕福とは言えない人達が多い。皆、"ダンスが無ければ犯罪者になっていた"とか"自分の表現すら出来なかった"とダンスに助けられ生きていると語る。このくらいのハングリー精神が無いと、この大会には出られないのかもしれない。僕も2009年のNY大会と2010年の東京大会を生で体感している。会場の興奮度は他のダンスの大会では見られないものだった。人生そのものを表現しバトルするこのBC Oneは単なるダンスの大会ではない。己の全てを相手に見せ付ける大会である。人生を賭けてダンスでバトルする。これはB-Boyingのルーツであるアメリカ・ブロンクスで、けんかの替わりにダンスでバトルしたあの精神を今でも最も表現しているのではないだろうか?単なるダンスの映画ではない。スポーツが人生を救うことを教えてくれる作品である。
■ストンプ!
監督:イアン・イクバル・ラシード
出演:ルティナ・ウェスリー、ドウェイン・マーフィ、トレ・アームストロング他
2007年 アメリカ映画
"親が望むこと"
姉が薬物中毒で亡くなり、お金が苦しくなったので、私立の高校を辞め、地元の公立高校に通いだす1人の女の子。その地区はスラム的な地区で犯罪は日常的に行われており、奨学金をもらい大学に行って、早くこの地域を出て行きたい彼女は、母の夜も寝ないで働く姿を見て、"STOMP"の大会の賞金で少しでも楽にしてあげたいと思う。亡き姉はSTOMPの天才的ダンサーで多くの大会で優勝していた。そんな姉の姿を見て、自分もやっていたSTOMP。勝ちそうなチームを渡り歩き、友達も裏切ってしまう。彼女にとってSTOMPは街を出て大学� �行く為の資金作りであり、大学に行く金を作ろうと必死で働く母を楽にしてあげる為の道具でしかなかった。しかし、そんな気持ちで踊っている彼女はあと一歩のところで負けてしまう。仲間に許してもらい、楽しむ為、皆と一体化する為だけに踊った時、本当の喜びを手に入れるのである。スポーツで夢や金やいい生活を手に入れたいという人もたくさんいるだろう。しかし、それは結果的についてくることであって、根本にそのスポーツ自体が好きであったり、仲間と共に頑張りたいという気持ちが無いと、真の成功には結びつかない。"ストンプ!"は、そんなピュアな心を取り戻したい時、見て欲しい作品です。
■最強絶叫ダンス計画
監督:ダミアン・ダンテ・ウェイアンズ
出演:ショシャーナ・ブッシュ、デイモン・ウェイアンズ・Jr他
2009年 アメリカ映画
"ダンス映画ファン必見のパロディムービー"
昔"裸の銃を持つ男"という色々な映画をパロディでつないでいく映画シリーズがあったが、この作品"最強絶叫ダンス計画"はダンス映画・音楽映画ばかりを集めたパロディムービーです。"フットルース""YOU GOT SERVED""ストンプ・ザ・ヤード""STEP UP""フラッシュダンス""ヘアスプレー""フェーム""ダンスレボリューション"などのダンス映画に加え、"Ray""ドリームガールズ"などの音楽映画も入っている。日本で言うと「とんねるず」などがよくやっているようなスタイルでパロディをやっているのだが、そこはMTVが制作しているだけあって、ヒップホップなどのダンスシーンも"セイブ・ザ・ラストダンス"の振付師が指導していたりと、音楽やダンスの制作チームも超一流でダンスのクオリティはすごく高い。ストーリーやテーマはパロディなので、強引なところも多々あるが、このような作品を通して色々なダンス映画に興味を持つ人は多いのではないかと思われる。元々、ダンス映画が好きな人にとっては何倍も楽しめる作品になっています。このようなパロデ� �作品が、ダンス映画やスポーツ映画を見るきっかけになってくれるのならとても良いことではないかと思っています。ゲイとか下品な部分もたくさんあるので、そういうものが大丈夫な人は是非見てください。
■メイク・イット・ハプン!
監督:ダーレン・グラント
出演:メアリー・エリザベス・ウィンテッド、テッサ・トンプソン 他
2008年 アメリカ映画
"田舎と都会"
シカゴから何百kmと離れた地に住むダンス好きの少女。母もダンサーを目指していて彼女が10歳の頃に他界。自分が夜遅く帰った日、父が家で倒れていて手遅れで他界。ダンサーになりたいという夢を持ちながら兄と2人で、父の残した自動車工場を守るために働く日々。しかし、3年たって、自分の夢を捨てきれず、1人シカゴに向かう。ダンスアカデミーに通っていると兄に嘘をつき、キャバレーのダンサーとしてダンスを磨く。いつかダンスアカデミーの狭き門に挑戦し、トップになることを目指して…。そんな時、工場の経営がうまくい� ��ない中、兄がシカゴまで会いに来る。ダンスアカデミーで勉強していると信じていたのに、キャバレーで踊る妹の姿を見て肩を落とす兄。父の形見でもある工場を救うためにシカゴから再び田舎に戻る彼女。そんな彼女の夢は?というストーリーなのだが、ストレートに友情、家族愛、夢が描かれていて、すがすがしく見られる作品だった。この作品で「私は田舎者だから…」というニュアンスのフレーズが時々出てくる。僕はこの時代に、田舎に住んでいようが、都会に住んでいようが大差は無いと思う。むしろ田舎だからこそ発信できることだからいい部分もあるのでは?とも思う。音楽の世界でも、沖縄や仙台のアーチスト達がライブの時だけ東京に来て、制作は地元でやるなんて、いっぱいあるし。(仙台はそんなに田舎ではな� �が、僕の知っている和太鼓グループの拠点・美里町などは本当に田舎だったもので…)自分たちのペースで創作活動をし、世界に向けて発信出来るのだから、ダンスもスポーツも音楽も、どこでやっていても構わないのではないか?と思う。しかし、ただやっていても埋もれるだけである。そこにアイデアや仕掛けが必要だし、苦労もすることだろう。全ての人間が発信者や表現者になれるはずなのだから…。
■ダンス・レボリューション
監督:ビリー・ウッドラフ
出演:ジェシカ・アルバ、メキー・ファイファー、リル・ロミオ 他
2003年 アメリカ映画
"子供を信じてあげる心"
ニューヨークの空撮とリズムの効いたラップミュージックとクラブから始まる"ダンス・レボリューション(原題HONEY)"。CDJから繰り広げられる音楽とHIPHOPダンス。クラブの1歩外に出るとB-BOY達のブレイキン。金や変な争いも無く楽しい世界が広がっていた。でも彼らは札付きの悪とされていて、警察が来るとBMXで逃げていた。主人公のハニーはセンターでダンスを教えている。バスケ、インライン、BMX、HIPHOPダンス、ブレイキン…ストリートのカルチャーがつまりまくっている。ギャングに憧れているが、ダンスの才能のある少 年と出会った彼女は、少年に自分のスクールに来るように勧める。ヤクの売人の手先のように使われていた少年。プロモーションビデオの現場に連れて行ったりして、ダンスには"夢"があることを体感させていくと、少年は徐々にギャングから離れ、"夢"を追いかけようという気持ちが芽生えていく。しかし、父からの暴力、業界を仕切っている人からあっけなく切られたりすると、少年は"夢"を持つことに失望し、ギャングに戻っていく。しかし、彼女はそんな子供達の集まれる場所を作ることを目標にチャリティライブを行なう。このライブで"夢は自分達の力でつかめる"ということを学ぶ。子供達の才能を信じ、大人達がその環境を作ることの大切さを、この映画は教えてくれる。格好よいものに子供達は憧れる。"ダンス� ��スポーツは格好よい""人のために何かをすることは格好よい"など、大人が子供達をひっぱれる存在になって示していかないといけないのだと痛感した。特別なことではなく、生活の中から自然に何かを伝えられる大人になりたいと思わせてくれる1本です。作り的にはティーンエイジャー向けに作られている作品だと思うのですが、是非大人に見てほしい作品。子供達を信じてあげる心、あなたは忘れていませんか?
■ロール・バウンス
監督:マルコム・D・リー
出演:バウ・ワウ、ニック・キャノン、シャイ・マクブライド 他
2005年 アメリカ映画
"ローラーダンスはスポーツとダンスの融合"
ローラースケートでダンスを踊るというと、"光GENJI"を思い出す人が多いのではないだろうか?本当はすごくアグレッシブで昔のソウルステップなども取り入れた格好良いものなんだけどな…。映像が無いから伝えられないな…と思っていたところ、発見しちゃいました。それがこの作品"ロール・バウンス"。
あの4ウィールのローラースケートでトリックやステップを活かし、DJのサウンドで巧みに踊るのである。まさにアメリカンなカルチャーである。少し古い感じもあるけど、ソウル、R&B、ディスコ好きにはたま らないカルチャーである。マービンゲイ、ビージーズなどのサウンドも楽しませてくれる。
貧乏な地区の友人達が組んだチームが、金持ちの地域のローラーリンクに乗り込むのだが、バカにされてしまい、自分達の誇りのために練習を重ね、挑んでいくという単純な明快なストーリー。主人公は、母を失い父親と妹の3人暮らし。父は家事を手伝ってほしいので彼に門限などを与えるが、コンテストの前、息子が頑張る姿を見て良き協力者となっていく。
70年代後半のアメリカのカルチャーがダイレクトに伝わってくる映画である。"ローラーゲーム"と"ローラーダンス"という2つのローラースケートカルチャーは、70年代後半の頃、僕にとってはまさにアメリカンカルチャーの代名詞だった。子供達誰もが親にローラースケートを ねだっていたあの時代。古き良きアメリカを感じるにはまさにぴったりの1本。さらに、ブレイクダンス的動きもあって、ルーツを見るにはもってこいの作品である。
■ローラーガールズ・ダイアリー
監督・製作・出演:ドリュー・バリモア
出演:エレン・ペイジ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、クリスティーン・ウィグ、
ジュリエット・ルイス 他
2010年5月ロードショー
"様々な愛情に包まれたローラーガール"
"ローラーゲーム"
この言葉の響きは僕達の世代にとって、なんだか懐かしい香りのする言葉だ。
子供の頃に見たアメリカンなスポーツで、パワーとスピード、ファッションは憧れの的で、誰もが親にローラースケートをねだり、"東京ボンバーズ"ごっこをしたものである。
僕の友人に元ボンバーズの選手がいて、日本でも"ローラーゲーム"の復活に向けて動いている話やアメリカの女子リーグの話を耳にしていた。この作品は、そんなア メリカ女子リーグのLAのチーム"ロサンゼルス・ダービー・ドールズ"のマギー・メイヘムことショウナ・クロスが自身の経験をベースに原作を書き、"チャーリーズ・エンジェル"で有名なドリュー・バリモアが監督したローラーゲームの映画である。女優達がトレーニングをし、一切吹替え無しでやっているリアリティや、劇中のコーチの説明の中で"ゲーム"や"ルール"を何気なく理解させていく作りはスポーツムービーとして立派だと思った。
家族、友人、チームなど色々な愛情が全編を包みつつ、ローラーゲームのスピード感、激しさ、ファッション性、音楽が刺さってくる作品だ。
若いアスリート達は自分の目標に没頭して、周りの友人や家族やチームや仲間の気持ちを忘れがちになる。
この作品は、そんな"ピ� �ア"な気持ちを思い出させてくれつつ、ローラーゲームの面白さをたっぷり詰め込んだ、青春アクションスポーツムービーである。
■STEP UP2〜THE STREET〜
監督:ジョン・M・チュ 製作総指揮:アン・フレッチャー
製作:アダム・シャンクマン他
出演:ブリアナ・エヴィガン、ロバート・ホフマン 他
2008年 アメリカ映画
"B-BOYINGは全ての人のもの"
前作"STEP UP"は、B-BOYNGやHIPHOPダンスの世界に生きてきた男の子と、バレエダンスの世界に生きてきたお嬢さんが、ダンスを通じて住んでいる世界を超え、1つになっていく融合の素晴らしさを教えてくれたダンスムービーだった。この作品の第2弾はどんな作品だろう?と思ってみたが、まったくの別ものだった。これは"B-BOYING"は全ての人の"自由"を表現するダンススタイルだと教えてくれる1本。ストリートでワイルドに生きている人が"リアル"で、学校に行っている人はB-BOYになれない訳じゃない。自由にダンスで表現し、友達と1つの目標に向かって何かを創り出そうとしている人全てがB-BOYになれるということを教えてくれる。B-BOY No.1を決める"BC ONE"の世界大会でニューヨークに行ったが、そこは本当にフレンドリーな空間でバイオレンスのにおいなど無い。"B-BOYは怖い"みたいな変な空気が流れているが、"B-BOYING"は全てのブレイクダンスを愛し何かを創ろうとしている人達のものだと教えてくれる作品だった。作品のカラーリング、色やトーンも好きな作品だし、HIPHOP、B-BOYINGのパワーがあふれている気持ちの良い1本です。
■STEALING BESS
監督:ルーク・クレスウェル、スティーブ・マクニコラス
出演:キップ・パルデュー、ローズ・マクゴワン、リー・エヴァンス 他
2002年 アメリカ映画
"This is Performance!!"
STOMPの制作者が、STOMPのメンバーを使ってストーリーの中でパフォーマンスを見せていく実験的作品である"STEALING BESS"日本語タイトルは"STOMPの愛しの掃除機"
FUNS FUNS WORLDのパフォーマンスが目指しているところは、まさに"STOMP"の世界観である。アスリートとしての肉体から作り出す極限の技+エンターテイメント。特に言葉を使わず、日常にあるものを使ってリズムやステージを作っていく彼らは世界中どこでも楽しんでもらえるパフォーマンスだ。しかもそれぞれがエクストリームマーシャルアーツ的動きやフリーランニング的要素もトップアスリートランクで、エンターテイメントと完全に融合している。こんなパフォーマーを日本で創りたいと思う。日本でもアイデアの部分はWAHAHA本舗の"3GAGA HEADS"がこの発想に近いオリジナリティあふれるものをやっていて、09年の世界3大コメディフェスティバルの1つ"fringe"でオリジナリティを競う賞にノミネートされた。彼らのパフォーマンスにXsportsのライダーをMIXしたらきっと日本流の"STOMP"が創れるはずなのに…。この作品のストーリーは、はっきり言ってすごいストレートで分かりやすいつくり。きっとパフォーマンスを見せたいがためにストーリーを作ったんだと思うのですが、1つ1つシーンの中で細かくパフォーマンスをしているのでじっくり見ることをオススメします。"This is Performance"と呼んでもいいくらい、これぞ、パフォーマンスの面白さという部分が、随所に散りばめられた作品です。
■プラネット B-BOY
監督・制作:ベンソン・リー
配給:トルネード・フィルム+イーネット・フロンティア
2010年1月9日〜渋谷シネクイントにてレイトショー
"カルチャースポーツの真髄を見よ"
世界三大B-BOYバトルの1つ、バトル・オブ・ザ・イヤーのドキュメンタリー映画
"プラネットB-BOY"
B-BOYとは、ブレイクダンスをする人のことを言うのだが、この大会はクルー対抗バトルである。フランス・アメリカ・日本・韓国のチームがフューチャーされていて"個"が強いストリートカルチャーにおいて、"チームのつながり"と"HIPHOP"という文化への尊敬の念が詰まった1本である。
それぞれの"生き方"と"世界大会"。
アスリート的一面が強くフォーカスされている作品だが、カルチャーとしての部分もそれぞれ の国民性も含め、しっかりと描かれている。
NewYorkで個人のB-BOY世界一決定戦"BC ONE"を生で見て撮影をしてきたが、B-BOYバトルの面白さは人生や考え方がストレートにダンスに表れてくることであろう。規定が無い分、自由に発想できるこのジャンルでは、それぞれが新しいスタイルを追い求めている。
物まねでなく、自分達のスタイルを創り出し、創り上げたチームが世界一をとることができる。規定が無い中で勝敗をつけるのは難しいと思うが、気持ちのぶつかり合いを楽しく見る事ができた。まさにエクストリームスポーツであり、エンターテイメントショーだ。
NewYorkブロンクスで生まれたHIPHOPカルチャーの1つ"B-Boying"が、しゃべらなくても人に伝えることのできるエンターテイメントツールだということ確信させてくれるドキュメンタリー映画"プラネットB-BOY"
この1本を見てカルチャースポーツ� ��真髄を知ると良いだろう。
■MAN ON WIRE
監督:ジェームズ・マーシュ
出演:フィリップ・プティ、ジャン・ルイ・ブロンデュー、アニー・アリックス他
配給:エスパース・サロウ
2009年6月13日〜新宿テアトルタイムズスクエア他ロードショー
"犯罪?芸術?エクストリームに挑戦する人達に問いかける問題作"
Red Bullアスリートに高層ビルや橋などから飛び降りるアスリートがいる。
今回の作品の主演、フィリップ・プティは綱渡り師である。許可無しでパリのノートルダム大聖堂やオーストラリアのハーバー・ブリッジなどにロープを張って渡り、パフォーマンスをしていた。
この作品は1974年8月7日にニューヨークのワールド・トレード・センター、ツインタワーの間にロープを張り、渡ってしまった時のことを追ったもの。年老いたフィリップや当時の仲間達が思い出を語り、当時のフィルムと再現で、計画から、ビルに忍び込み成功するまでをドキュメンタリーとして表現した作品である。
彼の思い入れや夢、情熱、恋人や友人の協力、仲間の裏切り…ストーリーとしては実にワクワクするものであった。"DOG TOWN&G BOYZ"でも高級な家のプールに忍び込み、水を抜いてスケートボードをするシーンがあったが、あれを見た時の感情と同じものが襲ってきた。ある人から見れば、凄い究極のパフォーマンスであり、夢を与え、不可能を可能にし、想像力や冒険心をかきたてられること。
しかし違った見方をすれば、住居不法侵入であり、命綱もつけていないので仲間達は自殺の共犯者であり、もし落ちたら自分が死ぬだけでなく、他人を巻き込んでしまうことにもなる。これは究極の二択なのかもしれない。
音楽、映像、ストーリーの素晴らしさの中に、エクストリームスポーツをしている人なら一度は悩まなくてはならない問題が隠されているので、新しいことを始めようと思っている人は、一度この作品を見て、自分のやっていることを、立ち� �まり考えてみてほしい。どちらの考え方も正しいと思う。でも信念をもって貫いて欲しい。そんな力をこの作品は与えてくれるはずだ。
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